劇場公開日 1982年9月18日

「映像表現への挑戦」トロン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 映像表現への挑戦

2025年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

興奮

斬新

■ 作品情報
監督: スティーブン・リズバーガー。脚本: スティーブン・リズバーガー。原案: スティーブン・リズバーガー、ボニー・マクバード。主要キャスト: ジェフ・ブリッジス、ブルース・ボックスライトナー、デビッド・ワーナー、シンディ・モーガン、バーナード・ヒューズ。製作国: アメリカ。

■ ストーリー
元ENCOM社の天才プログラマー、ケヴィン・フリンは、かつての同僚ディリンジャーに自作のゲームを盗まれた証拠を探すため、ENCOMのメインフレームにハッキングを試みる。ディリンジャーはフリンの功績を横取りして出世し、強力な自己認識型AIであるマスター・コントロール・プログラム(MCP)を使ってシステム全体を支配していた。
フリンはENCOMへの潜入中に、MCPのレーザーによってデジタル化され、コンピュータの世界へと送り込まれる。そこは、プログラムたちがユーザーの姿を模した独立した存在として生きる仮想空間だった。MCPはその仮想空間を独裁的に支配し、プログラムたちを過酷なゲームへと強制参加させていた。フリンはプログラムたちとともに、MCPの圧政に対抗するセキュリティプログラム「トロン」と協力し、システム内のデジタル独裁を終わらせるための戦いに身を投じる。

■ 感想
公開当時から気になっていたものの、これまでずっと見逃していた本作。新作公開前の予習として、やっと鑑賞しました。

今となってはCGの表現がチープに感じられる場面も多々ありますが、今から40年以上も前の作品であることを考えると、当時のクリエイターたちがどれほど果敢に、そして情熱的に新たな映像表現に挑戦していたのかがひしひしと伝わってきます。単にCGを用いるだけでなく、プログラムを擬人化するという発想も非常に斬新で、まさにアナログ社会からデジタル社会へと大きく舵を切ろうとしていた時代の象徴だと感じます。

さらに驚かされるのは、この作品が描く世界が単なるSFの夢物語で終わっていない点です。AIが驚異的なスピードで進化を続ける現代において、人間が思考を停止する可能性や、AIが自我をもつかのような振る舞いを見せる危険性を示唆していることは、非常に興味深く、鑑賞後に考えさせられるものがあります。

一方で、物語の運びがシンプルで、デジタル世界の変化が乏しいため、序盤こそその斬新さに引き込まれたものの、終盤まで物語を力強く牽引するにはやや物足りなさを感じます。ストーリー、映像ともに、後半にもう一捻り、予想を超える展開があれば、さらに傑作として記憶に残ったのではないかと思います。

おじゃる