「オーバードーズするくらいならこれを観ろ! 電子ドラッグで脳みそトロントロン…🤪」トロン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
オーバードーズするくらいならこれを観ろ! 電子ドラッグで脳みそトロントロン…🤪
悪のMCP軍団を倒すため、ハッカーのフリンと監視プログラムのトロンが電子世界で冒険を繰り広げるSFアクション。
「世界で初めてコンピューターグラフィックスを本格的に導入した映画」として知られる本作。
超ハイクオリティなCG技術で全世界を席巻した映画『アバター』(2009)を先日初めて鑑賞したので、どうせならそれと正反対の映画も観ておこうじゃないか!…という姿勢で観始めた訳なんですが…。
とにかく凄いのは、この作品の公開年が1982年だということ。
MicrosoftがWindows1.0を発売したのが1985年、Windowsを世界シェアにしたい米国によって潰されたという黒い噂のある国産OS「トロン」の運用が始まったのが1984年な訳で、本作はこれらよりも早い。とにかく時代の先を行っている。
当時、パソコンだのマイコンだのと言った家庭用コンピューターがどれだけ人口に膾炙していたのかよく知らないのだが、観客の多くはこの映画で描かれたことをよく理解出来なかったのではないだろうか。…まぁそれはパソコンの知名度云々とは関係ないところにある気もするけど…。
近年若者のオーバードーズ(薬物の過剰摂取)が問題視されています。市販の飲み薬を服用しまくってラリっちゃおう、という危ない遊びが流行っているとかなんとか。
そんな禁じられた遊びをしている若者たちに言いたい!
お前ら今すぐ『トロン』を観ろ!!
これはまさに観るドラッグ💊正気とは思えない世界観とビジュアル、赤と青の蛍光色が常にピカピカと光り輝いており、観ているとだんだん脳みそが蕩けてきちゃう。頭トロントロン………。
はっきり言ってお話は意味分からん。いや、物語自体はとても単純で、自分の作ったゲームを同僚に盗まれたプログラマーが、その悪事の証拠を掴むためにハッキングをしているうちに電子世界に飲み込まれてしまい、何やかんやで悪のコンピューターの親玉と対決することになるというものなんだけど、とにかく映像がドラッギーすぎてそんなことはどうでもよくなってくる。
複雑な人間ドラマとか緻密な心理描写とか、そういう要素は皆無。ただただ、CGを使った映像で観客を驚かせてやろうという、その一点のみに集中して制作された映画であり、そういう意味ではなかなかに思い切りが良い。
なんでそこでチューするの!?えっ、このヒロインはどういう神経してんの!?とかね、そういうことを気にしちゃいけないのです。
ただ訳分からん映像に脳みそを浸し、アッパラパーでアヘアヘしながらグダグダダラダラポワポワフゴフゴしてチラチラしたりしなかったりすればいいのです。…多分。
悪のコンピューター軍団の造詣には、『スター・ウォーズ』シリーズ(1977-)の影響が見受けられる。敵は赤、味方は青という配色も『スター・ウォーズ』まんまだし。
主人公フリンの性格はもろにハン・ソロ。この頃のジェフ・ブリッジスと若い頃のハリソン・フォードって顔も似てるし、途中からこれは「ハン・ソロの大冒険」なんだと思いながら鑑賞していた。チューバッカが出てきてくれれば良かったのに。ウルルルルルオォ!!!
『スター・ウォーズ』を参考にしているのだろうが、世界観のワクワクさやキャラクターのカッコ良さ、手に汗握るサスペンスなんかは全く真似出来ていない。
アクションもヘニャヘニャでお前らマジでやってんのかおい!と怒鳴りつけたくなるレベル。合成技術とかもまだまだの時代だし、役者さんたちもみんな手探り感で演じていたんだろうけどまぁ酷い。学芸会みたい。
そんなヘニャヘニャさとドラッギーな映像が合わさることで、とんでもないカルト感が生み出されている。これを狙ってやっていたんならすごい。
鑑賞後スタッフを調べてみて驚いた。これシド・ミードとメビウスがデザイナーとして参加してんの!?無駄遣いにも程があるだろ…。
シド・ミードといえばやはり『ブレードランナー』のデザインでしょう。『ブレードランナー』の公開年はなんと本作と同じ1982年。同じ人間がデザインしているとは思えないほどこの2作品のセンスの差はエグい。
優秀なデザイナーやイラストレーターが参加しているからと言って、映画自体がカッコよくなるとは限らない。本作がそのことを証明してくれている。
実は本作の製作はディズニー。
監督であるスティーブン・リズバーガーのインタビューによれば、撮影中古株のディズニースタッフから「君たちの姿を見ているとウォルトがいた頃を思い出すよ」と声を掛けられたのだそう。
ウォルトといえば、失敗を恐れず前人未到の挑戦をし続けた稀代のエンターテイナー。確かに、上手くいっているのかどうかは置いておくとして、実写とCGを組み合わせるという本作のスタイルは非常に革新的なものであり、ウォルト的なスピリットを感じさせる。
アニメと実写を融合したウォルト・ディズニー制作の短編映画『アリス・コメディ』シリーズ(1923-1927)と手触りは非常に似ているし、実はこの映画ってめちゃくちゃディズニーらしさに溢れている作品だと言えるのかも知れない。
CGと映画、今やそれは切り離す事が出来ないものとなっている訳だが、全てはこの映画から始まったのだと考えるとなんとも荘厳な気持ちになってくる。
内容はくっそドラッギーで何が何やら意味わからんものなのだが、映画史的に重要な本作を観ずに映画ファンを名乗ることは出来ない!!
もう一度言うが、ドラッグなんかやらずに『トロン』を観ろ!合法的かつ安全にラリれるぞ!!🫵