「最新映画の先進感」トロン Chuck Finleyさんの映画レビュー(感想・評価)
最新映画の先進感
追記挿入: 以下の長いレビューは、あまり本映画と関係ないことばかり無駄に書いてしまっていてバカバカしいので読まないほうが無難です。間違って読んでしまっても怒らないでください。
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本作品ロードショー当時は学生で常に金がなく(あれ?今もない)、観たい映画も名画座に降りてくるまでなかなか観られなかった。
前年「ニューヨーク1997」(escape from New York, 1981)冒頭の超かっこいいニセCG(当時は微塵も気づかなかった)に酔い、西武池袋店にあった「マイコン&レーザーディスクコーナー」で展示のコモドールとシンクレア(NEC PC-6001は既に敷居が高かった)を相手にBASICを始めようとしたものの、先にたむろしていた歳下の小学生達に脳力の違いを見せつけられ簡単に心が折れかけていたあの頃、「世界初のコンピュータ・グラフィックス映画」の肩書きのオーラはすごかった。
だから通学定期の守備範囲限界だった池袋を越え、ようやく新宿の名画座に入ってきたことを兄の「ぴあ」と「angle」(兄に頼まれて初めてこの雑誌を買った時、言われたまま「アロングって雑誌ありますか?」と訊ねて店員に「アングルならあります」と笑われたっけ)でダブルチェックし、勇んで観に行った。今考えると、往復の電車賃や外食代を計算に入れればそもそも地元の映画館でロードショー観られたかも知れないが。
そして内容は、、、もーどーでもよかった!劇場の大画面でホンモノ?のCGが展開されるだけで嬉しかった感覚を今もなぜか覚えている。戦車、光のバイク、光のヨット、戦艦、そしてヘンテコな“門”形パトロール機…
よく見れば、画面は全編うす暗いし登場人物(登場電子?)は、今だったらLOTRのエルフみたいに整った美男美女をキャスティングするだろうけど、本作ではなんか白塗りしたオジさんと微妙に事務員みたいなオネーさんばかりで“CG世界”と全然釣り合ってない…。
だいたい物質を原子単位にまで分解する、明らかに危ない超強力レーザーの発射口の真正面かつ複雑巨大な実験装置の中心に、わざわざ仕事用PC端末机を置く研究者がいるだろうか?
さらに振り返ってみれば、劇中登場する各研究者の中で、主人公の開発成果がダントツで大したことないぞ。システム侵入に失敗し物語序盤で消えてしまうザコプログラム程度…彼は結末で当然のように社長にまでなるのに。
それに比べ、ただの制御AI(この時点でもうスゴイ)から勝手に自我を持ってペンタゴン含む世界中のプログラムを配下に治めるシステム管理ソフト…なんて、ワル社長は時代を60年は先取ってる天才じゃないか!
そのシンギュラリティAIの鉄壁管理を中から打ち砕く強靭さと能力を持つ浄化プログラムを作った同僚、更にはなんといっても物質の空間転送どころか電子世界?への転送をも可能にするシステムを完成させた会社先代と女性同僚… 。なぜ彼らのほうが日の目を見ないのか。何十年後も完璧に作動するオーパーツ発明なのに、続編で男性同僚は窓際重役、女性同僚は登場すらしない。
いいや、それらは別に作品の質を落としていない(ような気もする)。要はこの時代にディズニーがある意味とてもディズニーらしく、と言って子供向けではなく本当の意味での“エポックメイキング”な新世界を、CGという新技術で表現しきったことにある(同様のディズニー意欲作「ブラックホール」(1979)は冒頭部以外グダグダだったが‥)。
ワタシ的には、当時の映画ファンがトロンに感じた斬新さは、先駆的実写3DCG映画として「アバター」(2009)が起こしたブームよりも、純粋な意味で大きかったと思う(アバターは、超素晴らしい3DCGが制作側のエコ価値観やポリコレ押し付けの制圧ツールに利用されているようで、私的にちょっと低評価でもあり)。
総ずればトロンは、元々無理が多い「未来的異世界」描写を、当時大型スクリーン上でできるギリギリの先端技術を使って、当時の大手映画会社中ディズニーだけが持っていた「ファンタジー描写に対する理解度•寛容性」でGOが出て作った、ある意味奇跡的なエポックメイキング映画と言えると思う(と無理にでもアゲたい若き頃の私が言っている)。
オマケとして、上記くらいのポジティブな思い入れ(単なるエコ贔屓とも言うかも)を持ってトロンを再鑑賞した後「トロン: レガシー」(2010)を観れば、結構良い(逆にいえば、さもないとこの続編は非常にパッとしない)。
ありがとうございます。
あの頃PCコーナーのすぐ隣にあったLDコーナーでコスモス(カール・セーガン)とかエーゲ海映像(Hなやつ)に気を取られずちゃんと88に精進していれば、私も今頃講演収入で余生を送っていたかもしれません…結局今も永遠の素人ですが、トロンOSやMSXの黎明に胸躍らせた時代が懐かしきです。あっ、PC関連では「ウォー・ゲーム(1983)」も良いですね。
感動のレビューです。
当時、旺文社の◯◯時代のエンタメページでトロンの公開を知り、「史上初のフルCG」との文言に感銘を受け、有楽町のスカラ座まで子供1人で足を運びました。
PC6001は、高校進学してからお金持ちの生徒会長が「88に買い替えるから自由に使ってよいよ」と生徒会室に置いてくれたのでウィザードリィなど遊ばせてもらったのが初の本格的パソコン体験です。
トロン公開時には、すがやみつるの「こんにちは マイコン」などを買って知識だけは得ていたけれど、本物のコンピューターには手が出せるはずもなく・・・。
当時、CGというものがどれだけ凄い事だったのか、懐かしく思い出される素晴らしいレビューをありがとうございました♪