「ハル・ハートリー ファンの作り方」トラスト・ミー shironさんの映画レビュー(感想・評価)
ハル・ハートリー ファンの作り方
『シンプルメン』を観た時の印象は、1+1=2にはならないもどかしさと、じんわりと広がる胸の痛み。
オフビートだけれとも、決して冷たくはない不思議な温度感に惹きつけられました。
今回の試写会は『トラスト・ミー』をスクリーンで観られるだけではなく、深田晃司監督のお話も聞けるとの事でしたので、
「自分はいったい、ハル・ハートリー作品の何処に惹かれているのか?」がクリアになるかもしれないと思い、応募しました。
まず、日本語字幕の裏話を聞いたことでハートリー作品を身近に感じ、
深田監督から鑑賞にむけての的確なヒントをもらい、
嶺川貴子さんのライブで、ハートリーの世界に入るウォーミングアップもバッチリ!
最高の流れで『トラスト・ミー』を鑑賞することが出来ました。
そして鑑賞後まで粋な計らい。『風と共に去りぬ』のテーマ曲でお見送りとは!『トラスト・ミー』の余韻にこれ以上相応しい選曲はありません。
ザ・シネマさんの完璧なナビゲートにより、ここにめでたくハートリーファンが誕生。*\(^o^)/*
もっと感性で観る映画だと思っていたのですが、
このプログラムで鑑賞できたお陰か、映画の骨格がクッキリハッキリ見えて、すごくわかりやすい映画に感じました。
全てのシーンに意味があって、無駄なく組み立てられている。
うちの次女に言わせると「名作と呼ばれる映画は、最初から最後までテーマが一貫していてブレがない。」のだそうですが、
それで言うと『トラスト・ミー』は、まさに名作!!
もしかしたら『シンプルメン』も、当時の私が理解出来ていなかっただけで、改めて観たら理路整然と感じるのかしら??
ザ・シネマでの三ヶ月連続放映に加え、4〜5月は大阪と東京で劇場公開も控えているそうなので、このチャンスに確かめないと ε-( ̄^ ̄)
《ネタバレ無しの範囲ですが、ここからは観てからお読みいただきたい》
テーマはズバリ依存と自立!
個人の自立はもちろん、親子であったり、夫婦であったり、男女であったり、それぞれの対比が素晴らしい。
自分しか見えていなかった主人公が、
“相手からどう思われていたのか”を知った事をキッカケに
自分が周囲に“どう見てえいたのか”を知り、
シンメトリーの二人が出会うことで、互いに影響し合い、化学変化を起こしていく。
たとえ元のままの相手に戻って欲しくても、始まってしまった変化は止まらない。
家族の為に我慢して働くのだって、りっぱな依存。
愛という名の下の自己犠牲なんてクソ喰らえ!
世の中が作った価値観で生きるのではなく、価値観は自分自身が作っていくものだということを学び、そこから決断する物語でした。
そして、トリッキーな親達にも、共感出来る部分があり…自分自身も親の立場だからわかる部分が増えたのだとすると、歳を取るのも悪くないな。(*^ω^*)
お気に入りはベンチのシーンと、駅のシーン。
ユーモアもたっぷりで、何度も反芻して楽しめる全く色褪せない映画です。