「制作当時の無自覚な差別を垣間見る」ドライビング・MISS・デイジー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
制作当時の無自覚な差別を垣間見る
近年でもまだまだたくさんある異人種交流ものの作品だ。差別や偏見を扱った系である。
作中での時間経過がとても長く、デイジーとホークが相当長い時間を共にしてきたのだが、深いやり取りはほとんど描かれない。
それでも、ふとした変化を見るに、描かれていない抜けているピースがなんとなく想像できてしまうのはいい。
笑えてハートフルでシンプルながら、とても良い作品だったと断言できる。しかも中々面白い。
面白く良い作品だと前置きして、なんかモヤッとしたなんだかなあ、なところをこれから書く。
モーガン・フリーマンといえば、穏やかな役の多い俳優だろう。寡黙、誠実、そんな言葉が合いそうな印象の人。
もちろん本人が演技派なので、どんなタイプの役も演じることができるだろう。
本作のホークは、フリーマンがあまり演じてこなかったタイプのキャラクターだったと言える。
では、ホークとはどんなキャラクターだったのかといえば、陽気でお調子者、当時の白人が考えるステレオタイプの黒人なのだ。
差別や偏見を扱った作品でありながら、作中の黒人像が差別的だというのはなんとも皮肉が効いてる。
90年代くらいまでの作品に登場する黒人キャラクターは、ほとんどこのタイプしかいない。当時はある程度仕方なかったのだろうと思う。観る側に受け入れられる体制ができていなかっただろうから。
事情はなんとなく察しつつも、なんだかなあとは思ってしまう。
それと同時に、人種やジェンダーについて、近年急激に変化していっているのだと感じずにはいられない。一種の映画史の一遍を観た気がした。
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