トパーズ(1969)

劇場公開日:

解説

サスペンス映画の巨匠ヒッチコックが、「引き裂かれたカーテン」以来、3年ぶりにメガホンをとった作品。62年のキューバ危機、緊迫化する東西両陣営の背後で暗躍するスパイを描いた作品。製作・監督はアルフレッド・ヒッチコック、共同製作はハーバート・コールマン。レオン・ユーリスの同名小説をサム・テイラーが脚色。撮影はジャック・ヒルドヤード、音楽はモーリス・ジャール、編集はウィリアムス・H・ジーグラーがそれぞれ担当。出演は「アルデンヌの戦い」のフレデリック・スタフォード、「渚のデイト」のダニー・ロバン、「冷血」のジョン・フォーサイス、「夕陽に向って走れ」のジョン・ヴァーノン、「007は二度死ぬ」のカリン・ドール、「昼顔」のミシェル・ピコリ、「夜霧の恋人たち」のクロード・ジャド、その他にフィリップ・ノワレ、ミシェル・シュボールなど。

1969年製作/アメリカ
原題または英題:Topaz
配給:ユニヴァーサル
劇場公開日:1970年6月19日

ストーリー

1962年のある日、政府の製作に批判的だったソ連の高官クセノフが、CIA(アメリカ中央情報局)のノルドストロム(ジョン・フォーサイス)の協力により妻と娘を伴いアメリカに亡命した。この情報は、ある情報組織の長であるアンドレ(フレデリック・スタフォード)にも伝わった。彼はただちに親友であるノルドストロムに会い、互いの情報を交換しあった。クセノフの話すところによると、ソ連がキューバに補給している軍需品の覚書は、国連のキューバ主席代表が所持している、とのことだった。アンドレは、妻のニコール(ダニー・ロバン)、娘のミシェル(クロード・ジャド)、その夫フランソワ(ミシェル・シュボール)を伴ってニューヨークに行き、再度ノルドストロムに会った。その時、彼から依頼された通商条約書を、アンドレは首尾よくキューバ主席代表パラ(ジョン・ヴァーノン)から写しとった。その後キューバにおもむいたアンドレは、愛人である地下運動の美人指導者ファニタ(カリン・ドール)を訪ね、仕事を依頼した。彼女は現在、パラによって身の安全を保障されている存在だったが、その仕事を承諾した。彼女の仲間から情報は次々と集まってきたが、仲間の1人がついに逮捕された。やがて帰国の途につくことになったアンドレは、危険になったファニタに亡命をすすめたが、彼女は涙をうかべそれを拒んだ。その彼女には、すぐ後にパラの拳銃をあびる運命が待っていた。そのころ機上では、彼女が詩集の表紙の裏にはりつけたミサイル基地などのフィルムをみて、アンドレが彼女への愛に胸をしめつけられていた。その後、彼とノルドストロムはクセノフから重大な情報を聞いた。それは、ソ連のためにスパイ活動をしているフランス人の組織「トパーズ」のことだった。首領は暗号名をコランバインという謎の人物で、副首領はアンリー(フィリップ・ノワレ)という男だった。この話を聞き少なからず動揺したアンドレは、仲間のジャック(ミシェル・ピコリ)らに頼み、旧友達を集め昼食会を開いてもらった。その中には、アンリーも加わっていた。しかし事件は意外な方向に進み、アンリーは殺されてしまった。そして、彼を襲った男の1人がもらした電話番号がアンドレの親友ジャックのものだった。さらにアンドレは、妻がジャックと愛し合っていたことを知った。翌日、米仏会談に出席を拒否され、ひとりセーヌの家に帰ったジャックの部屋で、1発の銃声が、鳴り響いた。自殺したのか、殺されたのか? 翌朝の新聞はキューバのソ連ミサイルが撤去されたことを、大々的に報道していた。

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映画レビュー

3.0巨匠の最後期の作品群をどう見るか

2021年2月27日
PCから投稿

才能が枯れたのか、それとも、さすがの巨匠も老いには勝てなかったのか。ヒッチコック70歳の節目に公開された本作は、お世辞にも良作と言えない代物だ。もともとスパイ物はヒッチコックにとってお得意の一手だったはず。とりわけ30年代の『三十九夜』などは、その後の同ジャンルの基礎を築いたと言っても過言ではない。しかし、あれほど「映像で語る」ことに長けていたはずの彼が、再びスパイ物へ舞い戻った『引き裂かれたカーテン』『トパーズ』ではすっかりストーリーに振り回され、時代遅れと化している感が強い。これらの作品が生まれた60年代といえば、ちょうど007シリーズが世に出て、あらゆるスパイ映画の常識が一変した節目。ヒッチコックがこの後塵をどれほど意識したかは分からないが、あえて007とは真逆の、リアルな諜報戦を描くやり方を貫いたのだとすれば、それはむしろ巨匠の矜持が窺える”攻めの一手”と評するべきのかもしれない。

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牛津厚信

1.0イアン・フレミングと言うよりもハリー・パーマーだネッ。

2024年7月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

4.0ヒッチでなければそこそこのスパイ映画

2024年5月22日
PCから投稿

実際のキューバ危機を題材にしたフィクションです。
二重スパイあり、どんでん返しありでそれなりにサスペンスな作品ですが、ヒッチを期待すると外れます。
妙にシリアスでいつものユーモアが皆無。映像技術ではなくストーリー勝ちなところがヒッチにしては異色、というか評判が低い要因でしょう。

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越後屋

4.0ヒッチコックという先入観を捨てて観れば大変に良くできたスパイ映画だ

2019年2月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

007シリーズの大当たりを前にして、ヒッチコックが本物のスパイ映画の手本を見せてやろうと言う意欲を感じる
ヒッチコックには珍しいユーモアもウイットの一かけらも無い、シリアスかつシビアな内容
肌合いは劇画ゴルゴ13に近い
スパイの情報の受け渡し手法、各国情報機関同士の関係性など極めて正確な取材に基づいたもので後年のフォーサイスのスパイ小説を思わせる

ヒッチコックの映画に抱くパターンを期待して本作を見ると欲求不満になるだろう
しかし、ヒッチコックという先入観を捨てて本作を観れば大変に良くできたスパイ映画だと評価が別れるだろう
流石はヒッチコックと唸るシーン、ショットも多い
花屋の温室、大通りを隔てたホテルのロビーでの言葉が聴こえなくても観客に意味を通じさせるシーン
キューバの美人スパイの死のシーンを真上から撮り彼女のドレスのスカートが血糊のように広がるショット
これらは特に印象深い

1962年秋のキューバ危機を巡る米ソ仏のスパイの物語
主人公はフランス情報部のワシントン駐在員
容姿は二代目ジェームス・ボンドのジョージ・レーゼンビーを思わせる
当時フランスはまだNATOに加盟していた
脱退したのは本作の時代の4年後1966年のこと
そして2009年に復帰している
それだけの時月が流れ去った
だから、この物語は半世紀以上昔の物語に過ぎないのだろうか?

冒頭のモスクワの軍事パレードはつい最近北京や平壌であったものと瓜二つ
キューバ危機は北朝鮮の核危機と相似形だ

同じ物語が今日本であってもおかしくないのだ
本作は半世紀の時を超えて現代性を帯びてきたのだ

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あき240