ドクトル・ジバゴ(1965)のレビュー・感想・評価
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時代に翻弄されながらも自分の信念に従って生き抜いた男の人生に心打たれた…
デビッド・リーン作品は長尺が多くて、なかなかテレビでは放映されない。まして、この作品は本当に久々の放映だった。このコロナ禍の中、映画館で映画が観られない状況で、たとえテレビとはいえ、観られたことは望外の喜びだった。彼の作品では『アラビアのロレンス』がベストだろうが、政治的な難しさがあるそれより、私はジバゴの方が好きだ。久しぶりに観直して、自分の記憶と違ったことに気づいた。もっとメロドラマかと思っていたが、第一次世界大戦やロシア革命も背景に描かれている。もちろんラーラとの愛が主軸だが、彼の弱者への優しさに心惹かれた。医学生の時も研究者は目指さず、開業医を志したところにも現れていると思う。ラーラとの出会いは最悪ながら、それでも彼女を愛した彼の懐の深さ。長い作品なので、録画した映像を少しずつ楽しみながら観たが、観終わった後も何日も感動に浸っている。
原作はロシアの小説だから
間違って2002年のリメイク版を観てしまった
紛うことなき、大人の名作です。
「午前10時の映画祭」でのリバイバル上映を観に行きました。これは「アラビアのロレンス」とともに、絶対にスクリーンで観るべき映画です。
わたしが選んだキーワードは、愛と情熱と信念。人間が造り上げていくものにも関わらず、抗えない時代の流れ。人間が選ぶものであるにも関わらず、抗えない情熱…情熱は恋愛だけではなく、政治思想などの信念にも激しく表れます。
一般に信念を持ち理想に邁進することは大切と言われますが、その強い信念や高邁な理想のために他人をも巻き込む悲劇をも生み出すことは稀ではありません。かたや表裏比興(老獪な食わせ物、やや嘲りを込めた言葉)と陰に日向に罵られようとも、人生は生きることにある、と悟ったように世を渡る生き方もあります。心の中は激しく揺さぶられながらも。
西側の制作による映画なので多少なりとも強烈な描かれ方がなされているとは思いますが、血の通わぬ雪と氷の地に起こった冷徹なロシア革命の動乱と混迷は、現代に生きる者にとっては大変恐ろしく感じます。
しかしその中でも人は生きているのです。殊に主人公ジバゴの感性はとても人間味があります。医師としての勤勉、詩の数々、そして運命の恋への情熱。冷厳なる社会の流れの中にも埋もれきらない、登場人物たちの人間味が表れています。
信念に生きようとする男でもなく、上手に世を渡る男でもないジバゴ。正直で純な男です。どっちつかずな、一生懸命な男です。
考えてみれば、医師という職業がそもそも「どっちつかず」なのかもしれません。人命を助けるという希有な働きができるため、敵味方の両方から重宝され、また利用もされやすい。彼が底意地を張ったのは、あの決断だけ…女であるわたしからすれば馬鹿みたいな男の意地で、彼は大切なものをすべて失います。
だけどそれが完全に間違った選択であったかどうかは、神の視点に立ったわたしたちにも断じることは出来ません。なぜなら同じ人間だからです。
ひとつ言えるとしたら。
動乱や政治に打ち克つことができるのは、連綿とつづく血脈だけなのかもしれません。夢半ばで倒れても、その子、その子孫が社会を生き抜き、生き続けてゆくことは何にも勝る抵抗だと思うのです。
畏怖するほど美しい映像の中に「人間」を描ききったこの作品は、3時間20分という長尺にもかかわらず冗漫でも情報過多でもありません。流行の映画などでは途中寝てしまうこともあるわたしですが、この映画には即座に引き込まれ、200分という時間が充実して流れました。
大人による大人の映画です。
※おまけです…「銀河鉄道999」のメーテルは、ロシア美女にしかマネが出来ないなぁと思いました。
個人から見たロシア革命と内戦
名作
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