劇場公開日 2020年11月27日

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「〈迷作中の名作〉に仲間入り」トータル・リコール(1990) マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0〈迷作中の名作〉に仲間入り

2012年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、DVD/BD

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ジェリー・ゴールドスミスが肉体派のシュワルツェネッガーを意識したか、「コナン・ザ・グレート」のような英雄ものに使えそうな音楽をつけている。
ストーリー運びの雑さとSFXの仕上がりも含め、典型的なB級SF娯楽作品である。

シュワちゃんの超人的パワーは相変わらずだが、対抗するリクターを演じるマイケル・アイアンサイドの悪そうな面構えがいい。この人はTVドラマの「V」でもそうだったが、ウージーを弾切れするまで撃ち尽くす姿がよく似合う俳優だ。

そして女優陣では、シュワちゃん演じるクエイドのカミさん・ローリー(シャロン・ストーン)とブルネットの女・メリーナ(レイチェル・ティコティン)の対決が見どころなのだが、ローリーはまずまずとしても、メリーナがぱっとしない。たいした前触れもなく登場し、ちょこちょこっとアクションして終わりだ。どうせ夢だからと、シュワちゃんのもう一つの顔、工作員のハウザーとの過去も深くは描かず端折ってしまっている。それにしても、ローリーとメリーナの直接対決が1回こっきりで、ローリーの最期もあっけなくて物足りない。

そして見るたびに、気圧のない火星で外に放り出されて、目ん玉が飛び出そうなのを必死に堪える短時間に大気が充満するという強引なラストにツッコミを入れるのだ。

だけども、世の中にはブツブツ文句を言いながらもまた見たくなる映画が存在する。迷作なのだが愛すべき1本というのがある。
ラクウェル・ウェルチの「恐竜百万年」(66)、ジェーン・フォンダの「バーバレラ」(68)のように時間とともに〈迷作中の名作〉となる作品も多い。
この「トータル・リコール」もそういう1本に仲間入りを果たした感がある。
〈迷作中の名作〉これこそがB級娯楽作品に与えられる最高の勲章だ。

ところで工作員のハウザーは存在するのだろうか? それとも映画のすべてが夢か? 本篇がホワイトアウトで終わるあたりが意味深で、夢か現実かを判断させる。そしてDVDを見返してみれば、リコール社の女性ドクター・ラルが “火星の青い空”という薬品を助手に放るシーンがあるのだ。

マスター@だんだん