天と地のレビュー・感想・評価
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1954年3月から5月にかけての ディエンビエンフーの戦い(195...
1954年3月から5月にかけての
ディエンビエンフーの戦い(1954年3月13日から5月まで)から今年で70年。社会主義国なので、独立闘争(開戦記念)70周年として、ベトナムはお祝いの真っ最中だった。また、来年の4月30日はサイゴン解放から50周年になる。また、アメリカとの国交が1995年なので、30周年記念。この映画上映時はまだ、アメリカとベトナムは国交が無かった。ちなみに日本は昨年に50周年になる。つまり、流石にアメリカよりも日本の方がベトナムとの国交は古い。しかし、カンボジアに内戦のあった時期はアメリカに忖度して、ソ連よりのベトナムと戦う民主カンボジアを日本は支援した事もあった。
さてこの映画だが、「アメリカのキャピタリズム」と「女性に対する差別」と「銃の問題」にはこの演出家らしい表現で良かったと思うが、残念ながら、アメリカを自虐的に描くも、ベトナムの「解放闘争」や「独立運動」については「虚偽」若しくは、「アメリカに忖度しすぎ」だ。やはり、一番気になるのは、南ベトナム解放民族戦線を「ベトナムの共産主義」と「ゴ・ジン・ジェム」の使った蔑視言葉で言っている事だ。
北ベトナム政権が南ベトナムを侵略した訳では無い。ベトナムの南部を解放したと解釈している。
「千と千尋の神隠し」に似て、日本人好みの音楽と思ったら、なんとキタ◯ウだった。
ベトナム戦争を南ベトナムの女性の視点から描く
オリバー・ストーンは、決して支配者層におもねることをしない監督。ベトナムに米軍が乗り込んだ戦争で、実際に何が起きたのか、南ベトナムの若い女性の視点から描いた貴重な映画。ベトナム戦争を知る上で、目を背けてはいけない映画だ。戦争は戦士の視点だけで語られるべきでない。
フランスの支配が終わったら、北ベトナム軍がやってきて、その後に米軍がやってきた。レ・リーの家族内での戦う意義は、「自由のために」「祖国を取り戻すため」という内容だった。決して、資本主義も社会主義も出てこない。独立のためであり、民族自決のために立ち上がったのだ。
ベトナムの民の生活は、自由が奪われ、搾取されてきたのだ。
米軍の攻撃は容赦がない。兵士が襲撃されると倍になって返ってくる。米軍の支配は、ベトナム人を使って行われる。これも植民地の原則。支配する側に敵意が向けられないようにするためだ。スパイ容疑で捕まると、拷問を受け、母がやっと賄賂で救い出したかと思いきや、次は北の兵士に南のスパイと疑われ、レイプまでされる。悲惨としか言いようがない。
南のサイゴンは米の資金投資で腐敗している。米軍相手の商売が横行、体を売る女たち、成金になって豊かな生活をする商人たち。金持ちの主人に雇われ、身籠って里帰りをするレ・リー。結婚する前に子を宿したと白い目を向けられ、母と一緒に実家を出てサイゴンへ。スティーブに口説かれ、貧困を脱して、子どもたちや姉と米国へ移住する。米国での生活は何不自由ないように見えたが、それも最初だけ。ベトナムの民は飢えているのに、米国の女性たちは、肥え太っている。この富を生み出すために、戦争が行われているのだという対比が何とも言えない。スティーブは、ベトナムでの特殊任務のため精神を病んでいて、夫婦仲は悪くなっていくばかり。アジア人に対する偏見、差別もかなりのもの。
戦争が、戦争の当事者の国々、戦争でボロ儲けをする国にどんなことをもたらすのか、一人の人間の視点と体験を通してみているのが良い。
夫、スティーブ自体が、アメリカという国を表しているかのよう。最初は、優し気に近づいてくるが、より金を儲けるために良心を悪魔に売っていて、そのトラウマや罪悪感、自己中に悩んでいる。最後は、自殺を選ぶ。一番の問題は、工作員を送って戦争の原因を捏造し、政治力を使って戦争に駆り立て、相手国を悪魔のように喧伝し、戦争でボロ儲けを企む奴らだ。しかし、それを描く映画を、製作することが許されていないのだろう。
最後のレ・リーの言葉が表題に繋がっているようだ。「私は、いつも中間にいる。南と北、東と西、平和と戦争、ベトナムとアメリカ、そういう運命なのだろう。今は天と地の間にいる。運命に逆らえば苦しむが、受け入れれば幸せになる。人は永遠に続く時間の中で過ちを繰り返す。だが、過ちを正すのは一度で十分だ。悟りの歌が聞こえてきて、憎しみの連鎖は永遠に終わる」「全てに因果があるのなら、苦しみこそが人を仏に近づけるのだ。」という言葉だったと思う。
よくあるハリウッド製作の戦争・アクション映画の誰が悪で誰が善ではなく、東洋の仏教的な考え方、自分が問題を解決しなければというところに違いがあった。相手に責任転嫁しないのが違いだ。
ベトナム人の視点から描いたベトナム戦争の映画はなかったということで、是非見てほしい映画。このような映画の評価が高くなるような世の中になってほしいと願う。
ある女性の劇的なる半生
天と地(93年・アメリカ)
いつもの如く、家族が借りてきた作品だ。原題がHeaven & Earthだとはいえ、この工夫のない邦題はいかがなものか。日本では海音寺潮五郎の小説(「天と地と」)と角川映画のイメージが強いから、タイトルだけでパスした人はけっこう居たかもよ。
鑑賞前に、オリバー・ストーン監督(しかもベトナム戦争もの)だと知る。きっと暗い内容だろうなあ…と想像。その予感は当たりだった。
ベトナムの農村風景がとても美しい。田園で働く人たちの姿も美しい。
しかしこの村は、日中は政府軍の影響下におかれ、夜はベトコンに支配される。比較的裕福だった主人公レ・リーの実家は田畑ともに焼かれ、家族の分裂が始まる。生活を破壊される農民たちの腹立たしい思いが、数分のシーンで表現されている。兄二人はベトコンに身を投じたものの母は処刑されかけ、スパイの疑念をかけられたレ・リーは政府軍から拷問を受ける。とにかく映画の前半はひたすら暗く重い。
母や姉と一緒に田舎を捨てて都会に出たものの、出来ることは限られる。姉は娼婦に、母とリーは住み込みの家政婦・子守りに。安住の地をみつけたと思いきや、リーは男前の旦那様と恋に落ちて妊娠。母ともども、奥方に追い出されるハメとなる。
母娘の関係が端的ながらリアルに描かれている。母はリーを傷つける言葉を投げつけると思えば、軍から助けてくれたり一緒に街を出たり、だが例の一件からリーを置いて故郷に帰り、最終的には立場を分つ。立場や体面、先祖の祭祀などを気にし行動の指針とする母は非常に東洋的だ。
2時間を超える長い作品だが、そのわりには端折り過ぎに感じた。この劇的な半生を描くのに削れるエピソードはないと断じたのかもしれないが、たくさん盛り込んだはいいが何が言いたいのか分かりにくくなってしまった。リーが自分の感情をさらけ出すのは、アメリカに渡ってからだ。ああ、もしかしたら洋の東西の違いを際立たせるために、ベトナム時代のリーにはあまり意見を言わせなかったとか…?
巨匠オリバーストーン流石!
巨匠のベトナム戦争三部作
プラトーン
7月4日に生まれて
天と地
今回は天と地を観ました。
プラトーンよりも数倍も良かったけれど、やはり戦争はダメ絶対!というメッセージが要所要所に描かれています。
もちろん、今作は実話に基づいたもの。
そして全ての女性に観てほしいと思いました。
何故なら今作はベトナム戦争をベトナム人女性側の視点で映していて素晴らしいからです。
だけど観たら、それはもぉ苦しくなりました。
攻撃、無法地帯、レイプ、拷問、戦争精神病…
それはそれは皆が傷ついて、それでも前を向いて日々を生きる姿が描かれている。
時代の流れに翻弄されるベトナムの人々。
先進国は何故、他国を乗っ取ろうなんて考えるのか皆目見当つかないけど、、、私。
だけど、これは決して他人事じゃない明日はわが身の日本です。それをシッカリ自覚して観なきゃいけないと思いました。
さて、今作の名言の備忘録…
戦争精神病の旦那から逃げている時の僧侶の言葉
★相手に改心するチャンスを与えることが出来なかったら自分の負い目を増やすだけだ。
もし相手を見捨てたら、自分を救う機会さえ失うだろう。
★悟りへの道は決して広くも安全でもなく険しく容易ではない。
天気のいい日だけ歩いても決して目的地には到達しない。道を誤らないように。
父親のいない子供は屋根のない家のようなものだ。
戦争精神病で夫が亡くなった時
★この家は住むには適していない。
表口から裏口へ一直線だ。
入ってくる全てのものが表口から裏口へ抜けていく。お金も幸福もだ。全てが通り過ぎる。
家族と再会した時の兄の言葉
★もう昔のことだ、水に流そう。
ただ明日にすがるだけ。
やっと明日が来ても、また戦争だ。
母の言葉
★戦争が作り出したものは沢山の墓だけだよ。
墓の中には敵はいない
涙は神様が悲しむ人間に、お与えになる慰めよ。私はもうダメ。激しい風で涙も枯れ果てたわ。
最後の主人公の言葉
★運命に逆らえば苦しみ受け入れれば幸せになる。
復讐の連鎖を永遠に断ち切る。
全てに因果があるなら、弱気の時、強くなれと教え、恐れる時、勇気を持てと教える。
混乱したら利口になれと教え、耐えきれなければ手放せばいい。
永遠の勝利は心で掴むのだ。
ベトナム人の女かわいそう
ベトコンゲリラだった少女が都会に出て妊娠して米軍兵と結婚してアメリカに渡って生活するという一代記。運命に翻弄されっぷりが凄まじく、また戦争シーンは迫力があるものの、そもそもベトナム人女性の人生に関心があまりないので2時間半もある映画を最後まで見るのが苦痛だった。
こういった誰々の一代記という映画を最近立て続けに見ていると、こうこうこうでこうでありましたと場面場面が流れていって物語としての醍醐味があまりない作品が多い。実話に基づいているから仕方がないのかもしれないが、その点『わが母の記』は「あの時母はなぜあんな事をしたのか」というミステリー要素があって見事だった。
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