天井棧敷の人々

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劇場公開日:2020年10月23日

天井棧敷の人々

解説・あらすじ

フランス映画の古典として知られる傑作群像劇。19世紀半ばのパリを舞台に、女芸人ガランスをめぐってさまざまな男たちが織りなす人間模様を、第1部「犯罪大通り」、第2部「白い男」の2部構成で描く。1840年代、劇場が立ち並ぶパリの犯罪大通り。パントマイム師のバチストは、女芸人ガランスを偶然助け、彼女に恋心を抱く。ガランスは俳優ルメートルや犯罪詩人ラスネールにも思いを寄せられていたが、誰のものにもならない。そこへ、同じくガランスにひかれる富豪のモントレー伯爵が現れる(第1部)。数年後、座長の娘ナタリーとの間に一児をもうけたバチストは、フュナンビュル座の看板俳優として舞台に立っていた。そんなバチストを毎夜お忍びで見に来る女性がいたが、彼女こそ伯爵と一緒になったガランスだった。ガランスが訪れていることを聞いたバチストは、ある時、居ても立っても居られずに舞台を抜け出すが……(第2部)。第2次世界大戦の最中、ナチスドイツ占領下のフランスで撮影だけで約2年の歳月をかけて製作された。監督と脚本は、ベネチア国際映画祭の監督賞を受賞した「霧の波止場」などを送り出してきたマルセル・カルネとジャック・プレベールの名コンビ。出演はジャン・ルイ、アルレッティ、マリア・カザレス。解放後間もないフランスで公開されて大ヒットを記録したほか、ベネチア国際映画祭特別賞などを受賞。日本では1952年に初公開。2020年10月、製作75周年を記念して「4K修復版」でリバイバル公開。

1945年製作/190分/G/フランス
原題または英題:Les enfants du paradis
配給:ザジフィルムズ
劇場公開日:2020年10月23日

その他の公開日:1952年(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

4.0 自由と平等

2025年11月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

二十代の頃に初めて観たときは、面白いんだか何だかよくわからなかったのですが(苦笑)、今観ると、冒頭からラストまで「これぞ、名画!」という風格に魅了されました。ただ、その魅力は捉えにくく、ひとりの女性に振り回される男達の心情もわかるような、わからないような不思議な感触でした。ガランス役のアルレッティは、撮影時(1942~43)に44~45歳ですが、一体、何歳の設定なのでしょう?美しく妖艶な容姿で「恋なんて簡単よ!」と言われると、男達は何もかも投げ出して愛の告白に命を捧げてしまう…。ふと、沈没船ジョークのフランス人を調べたら、「決して海には飛び込まないで下さい」だったので、少し理解できましたが(笑)。名シーン、名台詞のオンパレードですが、特に、バチスト(ジャン=ルイ・バロー)がガランスと出会い、パントマイムを披露するところはとても印象的な名シーンでした。今作に限らず、一目惚れで恋に落ちる場面は多くの作品で描かれますが、そんなことをしてるのは人間くらいかなと時々考えることがあります(笑)。他の動物だと、角と角をぶつけ合って強い方を決めたり、より美しく踊れたり、立派な巣を作れたりというある種の審査過程がありますが、人間には一瞬見ただけで見極める能力があるのでしょうか。勿論、見誤ってしまって、予想外の展開になることもあって、それ自体が人生における悲喜劇を生む源泉なのかもしれませんが。今作の舞台となる1820~30年代のパリの世相や、映画が作られた戦時下の混乱の中で、「天井桟敷の人々」に象徴される自由や平等を希求する人々の思いが強く印象に残りました。

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赤ヒゲ

4.5 世紀のラブ・ストーリー‼️

2025年11月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD

泣ける

悲しい

興奮

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活動写真愛好家

5.0 これぞ映画という名作

2025年10月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

放送大学231オーディトリアムで2週にわたって視聴。
1部と2部を合わせると、3時間を超える大作。CGもVFXもなかった時代に、圧倒的な数の群集が登場する迫力と熱量。これが、ナチス支配下のフランスでつくられ、しかも全編を通して恋愛映画であることが、逆にレジスタンスになっているという見事さ。「これぞ映画」という名作だった。

描かれているのは、19世紀前半ロマン主義時代のパリ。貧しい幼少期を経て、自由奔放に逞しく生きながら、伯爵に囲われて自由を失ってからは笑顔すらなくなってしまったガランスの姿が、ドラクロワの描く「民衆を導く自由の女神」と重なってみえた。

「ガランス」は、村山槐多の詩に「一本のガランス」というのがあるように、「茜色」。対して、バチストは「白い男」。ラストシーンの謝肉祭は、「青空」の下。

白黒映画だが、トリコロールの三色が揃っているのも、意図なのだろう。

<ここから野崎教授の解説メモ>

・天井桟敷は、パラディ(フランス語で天国)と呼ばれ、原題は「天国の子どもたち」と訳せる。
(子どもと言っても大人たちだが)

・ナチスドイツの占領下で、亡命せずに残ったマルセル・カルネ監督や脚本家で詩人のジャック・プレヴェールなど、当代随一の才能が結集して製作された。

・セリフの重視や名台詞の豊かさ(「愛しあう2人にはパリは狭い」など)が感じられる

・美術や音楽では、ナチスから迫害を受けていたユダヤ人たちの才能も。(非合法に協力とのクレジットあり)

・バチスト、フレデリック、ラスネールの3人は実在したモデルがいた。その人物造形について、監督は、カルナヴァレ博物館の版画部門に通い詰めて肉付けしていった。

・密告をして人々から嫌われる古着屋はナチスの象徴。

・昼の見世物小屋に対して夜の芝居小屋といった対比構造が全編でみられる。

・「自由、平等、博愛」がスローガンだったフランスが、「勤労、家族、祖国」をスローガンにしたヴィシー政権(ナチスの傀儡政権)に支配されていた時期。

・ガランス(Garance)は、フランス(France)に響きが同じ。

・フランス的パラドクスを体現した作品。国威発揚にならないからこそ、誇らしいアイデンティティになっている。

・ラストシーンのカーニバル(祝祭)は、ナチスからの解放を先取りしている。

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sow_miya

4.5 久しぶりに再視聴。感じ方の違いに戸惑ったが、やはり凄みのある名作。

2024年9月17日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

知的

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Kazu Ann

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