「比較して「スウィングガールズ」の完成度の高さを感じました。」天使にラブ・ソングを2 よしさんの映画レビュー(感想・評価)
比較して「スウィングガールズ」の完成度の高さを感じました。
廃校の危機に瀕した高校を救うべく、音楽科の生徒たちと立ち上がる主人公デロリスを描く物語。
サスペンス色があった前作と異なり、この作品は青春映画に一変。それでも、無理をまったく感じないプロットは見事です。
物語は青春王道もの。
反抗的でやる気もない生徒たちが、指導者と共に成功を目指す・・・まさに王道で、観やすい映画に仕上がっています。
そして、前作と比較して明らかに超えているのが、音楽の迫力。デロリス役のウーピー・ゴールドバーグは勿論、後にトップアーティストになるローリン・ヒル等が歌うシーンは迫力タップリ。
特に、クライマックスのシーンは、何度リピートしても飽きることはありませんでした。
前作の聖歌隊も登場し、音楽シーンは大満足でした。
ただ、映画としてみた場合には雑の部分が目立ち、物足りなさを感じます。
例えば、理事長と校長の役回りの描写が不十分です。クライマックスでは、理事長は最後まで敵キャラで、校長はやる気漲る生徒たちをみて生徒を激励します。しかし、物語を通してこの役回りの明示が不十分で唐突感を覚えます。「本部ではなく、理事長が廃校に積極的であった」とか、「理事長と生徒の板挟みに合い苦悩している校長」とか・・・そのようなエピソードをしっかりと描いてくれたら、ラストシーンも納得感が出るように思います。
もっと厳しく言えば、理事長自体が必要ないようにすら思えてしまいます。理事長の役回りは本部の人間が担えば良い話ですから、キャラが整理出来てシンプルになるように思います。
例えば、リタの描き方も無理があります。
リタは当初聖歌隊に参加せず、その後に翻意して参加。しかし、母親の叱責により大会直前に参加を断念して、出発直前で再び翻意して復帰。そしてメインとしてステージに・・・この一連の流れが諄く、しかも無理があり過ぎます。
同じようなエピソードが2度繰り返されることに飽きを感じます。2度も翻意したリタがメインを張ることに、他の生徒が同意するのは説得力を欠いています。
復帰を決断するシーンの描き方も浅く、その点でも説得力を感じません。
このような話にするなら、リタは当初は積極的に聖歌隊に加わりリーダーとして引っ張っていた・・・という風にした方がしっくりときます。離脱と復帰は一度で済みますし、復帰した彼女を受け入れる同級生達にも説得力を感じます。
復帰する理由も、「ミュージシャンをしていた」という父親を登場させれば、より感動的なものに出来たかもしれません。
そして、何より納得出来ないのは、生徒たちが凄すぎることです。幾ら音楽科の生徒たちとはいえ、素人同然の少年少女。名伯楽の指導を受けたとはいえ、この完成度は物語から逸脱しています。
「最優秀」という結果を含めて、物語には疑問を呈さざるを得ません。
ま~、音楽の完成度で言えば、それがこの映画の「ウリ」なのでしょうから仕方ないのでしょうね。ですから、出来れば大会の結果は変えて欲しかった。
例えば「最優秀」は伝統校に。その結果を受けて落胆する生徒たちに「審査員特別賞」が発表されて、歓喜する・・・なんてどうでしょう。授賞式のあとに、伝統校の生徒から賞賛の言葉・・・とかがあれば、カタルシスもばっちりです。物語の説得力も大きく増すように思います。
色々と書きましたが、音楽的な魅力タップリな映画。私的評価は普通にしました。