劇場公開日 1994年6月11日

「まぁ、院長ったら(笑)。」天使にラブ・ソングを2 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0まぁ、院長ったら(笑)。

2021年3月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

幸せ

萌える

「Joyful, Joyful」も魂揺さぶられてパワーがあふれてくるけれど、
”映画”のワンシーンとしては「Oh! Happy Day」のシーンの方が好き。
 音楽授業を選択した子どもたちが、初めて?皆の前でコーラスを披露する場面。もちろん、舞台に立っている生徒たちもドキドキ。かってに歌う時はそれぞれあんなにうまいのに、ぎこちない。それを見守る神父・シスターや理事長の表情。子どもたちの歌に合わせて変化していく。
 そんな些細な場面が丁寧に描かれている。
 その分展開は早い。あっという間にクライマックス・コンクールの場面。子どもたちもはちきれんばかりのパワーを発揮してくれるが、神父・シスターも…。尤も、ここでの主役は子どもたちだから、神父・シスターはほのぼのとやらかしてくれて、それが暖かくて涙があふれてくる。

今度は荒れた高校の再生物語。筋は突っ込みどころ満載。
 ”荒れた”というけれど、本当に荒れた学校はあんなもんじゃないと思う。暴力が支配しているというより、「この地域なんだから」と夢をみることさえ、自分の才能を花開かせることさえあきらめていることが一番の問題か。
 たった一年前の、自分の住んでいる近くでの出来事・法王猊下の行幸・有名雑誌の表紙を飾った教会・人物ということすら、はじめ神父や生徒は気が付かない。世間や社会への関心のなさ。
 それでも、生徒はみんな素直。親に金銭的負担をかけたくないから留年はしたくないとか、家族みんな高校中退だから俺だけは卒業したいとかいう心意気が泣けてくる。家族とのつながりはあるのね。それゆえに悩み深い子もいる。
 授業がつまんなすぎて授業崩壊という典型。教義やこちらが”良い”と思っていることを一方的に押し付けるだけじゃね。

Wikiによると、好評価映画の続編を黒人の監督が任された、ハリウッド史上初めての映画なんだとか。だからか、黒人高校生の設定が細やか。すでに何世代か続きでアメリカで生まれ育っている人たちと、アフリカのルーツにこだわっている人とか。”黒人”でひとくくりにしていない。

先の読めるストーリー。なのに、なんでこんなに心が躍るのだろう。
 歌って踊っているその姿にこちらまで体が動いてくる。
 ゴールドバークさんの体の軽さ、はじけっぷりは相変わらず。
 シスターたちもいいリズムで踊るのだが、どこか調子はずれな人もいるので、ああ私もへたなりに踊っていいんだと自信が出てくる。おばあさんたちが、これほど活き活きと楽しそうにはじけているのも、うれしくなってくる。

そして、シスターパトリックとラザレスは相変わらずだが、シスター見習いのメアリーロバートが頼もしくなっていたりして。
 コンクール出場を提案してくるのも、シスター・クラレンスじゃないって言うところがミソ(けっしてクラレンスの独り舞台じゃない)。
 高校生の背景がシリアスな分、前作より歯切れは悪いが、シスターや神父の絡みがコメディ。
 そして、ピリッと締めてくださるのが院長。さらっと毒舌・すごいことを言い放って、問題解決しちゃう様は相変わらず。コメディっぽい演技じゃないんだけれども、だからかかえって大笑い。

欲を言えば、エンディングであれだけ踊れるのを見せてくださったのだから、神父たちのゴスペルも観たかったな。

とにかく、歌のパワーに圧倒される。
 でも、何度も繰り返し見ていると、こんなところでこの人がこんな表情している、こんなことやっているとか、いろいろな発見がある。敵役の理事長が、バザーの様子を見に来て、いつの間にかリズムとっていて、それに気づいて、立場を思い出してごまかすとか、小さなところで芸が細かい。

 そして、いつの間にか、デロリス・シスター・神父・子どもたちに会いたくなって、何度もリピートしてしまう。

とみいじょん