デス・レース2000年のレビュー・感想・評価
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このレースに失敗なんか存在しないッ!存在するのは殺戮者だけだッ! 反権力・反社会・反A級、これぞ帝王コーマンの真骨頂☠️
ディストピア的未来で繰り広げられる死のレースを描いたSFカーアクション映画『デス・レース』シリーズの第1作。
西暦2000年、全体主義国家と化したアメリカで北米大陸横断レースが開催される。前回王者フランケンシュタインに人々の注目が集まる中、反政府組織は密かにレース壊滅作戦を企てていた…。
フランケンシュタインのライバル、マシンガン・ジョーを演じるのは無名時代の、後のレジェンド俳優シルヴェスター・スタローン。
低予算で映画を撮りまくり、ハリウッドに(良くも悪くも)多大な影響を及ぼした「B級映画の帝王」ロジャー・コーマン。今年惜しまれつつも亡くなってしまったが、半世紀以上にも渡って存在感を示し続けた怪物中の怪物である。
そんな彼の代表作といえばやはりコレ!
反権力・反社会・反A級、無秩序無遠慮無節操な、やりたい放題のチキチキマシン猛レース。人を轢き殺せばポイントゲット、弱者なら弱者なほど高得点という、ブラックすぎてシャレになってない暗黒コメディである。
安いOP、チープな車、狡い衣装。何から何まで安っぽすぎる訳だが、それこそがコーマン流映画術。浮いた予算を爆発・血しぶき・おっぱいにつぎ込めば、バカな観客はコロっと靡いてしまう。
このコーマン戦術は、今日に至るまでインディペンデンス映画の基本として脈々と受け継がれている。バカバカしいからと言って無下にする事は出来ない。…にしても、本当に無責任な映画だなこれ💦
細かいお話のスジとか、そういう事はどーでも良い映画である。バカみたいなマシーンが人をバカバカ轢き殺し、途中の休憩ポイントでおっぱいを映し、爆発させまくった後になんか良い話風に映画を締め括る。それだけ。
「人間は知能を持つ前からすでに武器を手にしていたのだ…」とかいう賢そうなナレーションをEDに流せば、しっかりとしたSFに見え…る訳ねーだろッ!良い加減にしろ!!
とはいえ、要所要所に描きこまれる政府の報道規制やデマゴギー、報道機関との癒着などは政治風刺としてなかなかに的確。クソなテレビレポーターの描き方なんて、まるでフランク・ミラーのコミックのような鋭さがあった。
独裁的な大統領とそれにベッタリな大手SNS。暴力を暴言に、「敵はフランスだ!」のところを「敵は移民だ!」に置き換えればまんま今の社会と一緒じゃん。ニクソン政権下の抑圧的な風紀がこの作品の下敷きにあるのは間違いないが、色々とおかしな事になっている現代だからこそ、今一度この作品に光を当ててみるのも良いのではないだろうか。
最終的にフランケンシュタインが政権を握る訳だが、それで社会が良くなるわけではなく、ただまた別の独裁者を生み出しただけというブラックなエンディングも風刺が効いている。ザ・漫画な映画なのだが、そんじょそこらの頭お花畑なものよりもむしろ知的な作品だと思っているのは私だけでしょうか。
チープな作品であることは疑いようもないが、ブラック過ぎるコメディ、セスナとのバトル、ブロンド美女のおっぱいと、見どころに溢れている。カルト的な人気を博しているのも納得の怪作である。
本作公開から1年後、シルヴェスター・スタローンは『ロッキー』(1976)によってスターへの階段を駆け上がる。まだ何者でもなかった頃のスライの勇姿を拝めるというだけで、本作を鑑賞する価値は大いにあると言えるだろう。シンプルにボコられるスライを見られるのはこれだけ!
また、撮影監督を務めたタク・フジモトは後に『羊たちの沈黙』(1991)や『シックス・センス』(1999)といった傑作群に参加する名キャメラマンへと成長する。若き才能というのは意外なところに集まるのだ。
※本作のinsaneな内容は後年の作品に様々な影響を及ぼした。特に日本のアニメや漫画には、本作の影響が見て取れる作品がいくつもある。小池健監督の『REDLINE』(2010)や、荒木飛呂彦による漫画「スティール・ボール・ラン」(2004-2011)などはその良い例だろう。これらの傑作のイメージ元になったというだけで本作は十分に偉大である。
気になるのは、黒いラバーに身を包んだフランケンシュタインの風貌、そしてレジスタンスという設定。これ完全に『スター・ウォーズ』(1977)に引き継がれてますよね!?
コッポラやスコセッシ、キャメロンなどを輩出した事で知られるコーマンだが、実はルーカスにも影響を与えているのかもしれない。…考えすぎかもしれないが。
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