「家族を奪われた怒りが痛々しく燃え上がる不朽の名作」追想(1975) よねさんの映画レビュー(感想・評価)
家族を奪われた怒りが痛々しく燃え上がる不朽の名作
1944年、ドイツ軍の占領下にあるフランスの小さな村モントーバン。医師のジュリアンは医療物資が不足する中次々に運び込まれるケガ人の治療に忙殺されていたが、負傷した反乱分子を強引に連れ出す兵士達に抵抗したことでドイツ軍に睨まれてしまう。戦況も悪化する中ジュリアンは妻クララと娘フロランスを自身の郷里に疎開させるが、ある日郷里を訪ねたジュリアンは夥しい数の遺体を発見、その中にクララとフロランスもいた。深い悲しみに暮れるジュリアンは隠してあったショットガンを手に取り村を占領したドイツ軍にたった一人で立ち向かう。
孤独な復讐劇の合間にジュリアン自身の幼少期の思い出やクララとの出会い、家族や村人たちとの団らんがフラッシュバックする構成は正に”追想”。妻クララを演じるロミー・シュナイダーの妖艶な美しさが何度も蘇り、物静かで優しいジュリアンを殺戮に駆り立てる痛々しさが淡いトーンの映像の向こうで燃え上がり、その炎が狂おしいまでに残酷な記憶までも瞬時に焼き尽くします。やはり名作、圧倒的な風格にしばし席を立てませんでした。
本作、初見でしたが要所要所でデジャヴが喚起されます。すなわち本作が以降の作品群にどれほど多大な影響を与えたかを如実に示しているわけで、個人的には記憶の彼方にあるぼんやりした思い出の中に一つ一つパズルのピースがパチンと嵌っていくかのような高揚感を味わいました。
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