父の祈りを

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

1970年代のロンドンで起きた実在の冤罪事件「ギルフォード・フォー事件」を基に、無実の罪で投獄された父子の戦いと絆を描いた人間ドラマ。「マイ・レフトフット」の監督ジム・シェリダンと主演ダニエル・デイ=ルイスが再タッグを組み、1994年・第44回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。1974年、北アイルランド。定職にも就かず遊んでいる青年ジェリー・コンロンは、IRAを挑発したために彼らから目をつけられてしまう。父ジュゼッペはほとぼりが冷めるまで、ジェリーをロンドンへ行かせることに。やがて、ロンドンから約50キロ離れたギルフォードで爆破テロ事件が発生。久々にアイルランドに帰ったジェリーは、爆破テロをIRAの犯行と考える警察に容疑者として逮捕され、父ジュゼッペも連行されてしまう。ジェリーは厳しい尋問の末に白紙の供述書に署名し、父子は同じ刑務所に投獄される。共演に「ユージュアル・サスペクツ」のピート・ポスルスウェイト、「ハワーズ・エンド」のエマ・トンプソン。

1993年製作/133分/イギリス・アメリカ合作
原題または英題:In the Name of the Father
配給:UIP
劇場公開日:1994年4月16日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第51回 ゴールデングローブ賞(1994年)

ノミネート

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀主演男優賞(ドラマ) ダニエル・デイ=ルイス
最優秀助演女優賞 エマ・トンプソン
最優秀主題歌賞
詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

  • 画像1

写真:Album/アフロ

映画レビュー

4.5【”英国司法界の最大の汚点”今作は愚かなアイルランド青年と父、友人達がIRAの爆破事件の犯人とされた中、青年が父の生き方に触発され改心し、優秀な弁護士により無罪を勝ち取った実話の実写化の逸品である。】

2024年12月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

幸せ

ー この映画で描かれる”バーミンガム・パブ爆破事件”は、学生時代に有名な冤罪事件の一つとして学んだモノである。
  この作品が優れているのは、冤罪で逮捕されながら自暴自棄になっていたダニエル・デイ=ルイス演じるジェラード・パトリック・コンロンが、自分と共に逮捕された父ジュゼッペ・コンロンを演じたピート・ポスルスウェイトの”無実である事を諦めない。”姿を刑務所内で共に過ごす中で見続ける中で、人間的に成長する姿である。
  そして、ジュゼッペ・コンロンが獄死した事で、彼の怒りは沸騰しそれまで否定的に接していたガレス・ピアース弁護士(エマ・トンプソン)に協力していく姿である。

■1974年10月5日、英国・ギルフォード。
 IRA暫定派のテロが拡大するなか、一軒のパブが爆破される。容疑者はアイルランドからやってきたジェリー・コンロン、ポール・ヒル(ジョン・リンチ)ら若者4人。
 急遽制定された”テロ防止法”により、ジェリーの父・ジュゼッペや叔母アニー・マクガイアの幼き子供達を含めた家族たちも、テロの協力者として逮捕されてしまう。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・イギリス世論に後押しされた格好で、警察がジェリー・コンロン、ポール・ヒルを様々な手段で脅し、供述書にサインさせるシーンを見ると”何処の国の、冤罪事件も同じだな・・。”と苦い気持ちになる。

・ジェリー・コンロンが自暴自棄になる中、父のジュゼッペが再審を訴える手紙を書くシーン。そんな中、IRA暫定派のジョーが入所してきて”自分達が爆破した。”とコンロン親子に告げるも、ジュゼッペが彼の協力を拒むところに、今作の”爆破テロそのものを、否定する。”と言う姿勢が伺える。(実際にそうであったのだが。)

・徐々に持病の肺の病が悪化していくジュゼッペの姿を見たジェリーが父に”僕も、書くよ”と言って再審を訴える手紙を書く意思を伝えた時の、ジュゼッペの表情。
 だが、ジュゼッペは獄死する。
 その知らせを聞いた監獄に繋がれていた囚人たちが”抗議の紙を燃やし、牢の鉄格子から外に撒くシーンは、哀しくも沁みた。

■そして、ジェリーの再審請求の願いを受けたガレス・ピアース弁護士(エマ・トンプソン)が15年前の”事実”を掴んで行くシーンは、見応えがある。公開が許可されたジュゼッペの資料を求める中、係の者が”コンロンと書かれた段ボール箱は二つあるが。”と聞かれた際にガレス・ピアース弁護士が求めたジュリーの警察資料。
 その中にはジェリーとポールが一晩を過ごした時に公園のベンチで出会っていたチャーリー・パークの”警察がそんな者などいない。”と言っていた弁護側には開示不要””と書かれたメモがクリップで付いていた事情聴取の資料が見つかるシーンは、興奮したなあ。

<15年経った再審裁判で、ガレス・ピアース弁護士は警察が隠蔽していたチャーリー・パークの資料を提示するのである。
 動揺が走る警察側の数々のでっち上げ捜査をした3人の刑事達の表情。
 そして、裁判官はガベルを叩きながら、無実の罪で獄に繋がれていたジェリーを始め、ポール達実行犯とされた4人と、叔母アニー・マクガイアの幼き子供達を含めた家族たちの名前を読み上げ無罪を告げるのである。
 今作は、今作は愚かしきアイルランド青年と父、友人がIRAによる爆弾事件の犯人とされた中、優秀な弁護士により15年の服役後に無罪を勝ち取った実話を実写化した逸品なのである。>

コメントする (0件)
共感した! 1件)
NOBU

2.5北アイルランドとジャマイカは英連邦♥

2024年10月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 1件)
共感した! 1件)
アンドロイド爺さん♥️

5.0父と息子

2024年9月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

怖い

興奮

70年代、北アイルランドのIRAとイングランドの抗争の中で実際に起こった冤罪事件を基にした映画。ケネス・ブラナーによる映画「ベルファスト」を思い出す。冤罪で30年の服役を言い渡され結果15年も刑務所に入れられた若者たち、その中の一人ジェリーは自分の父と叔母にまで冤罪が及んだ。検察側は彼らが全くの無実だと知っていてその証拠書類は弁護側に見せてはならないと隠蔽もしていた。

「刑務所の中にいても頭の中は自由」だから、毎日妻と頭の中で散歩しているんだと、歩く道の名を一つ一つ挙げるジェリーの父ジュゼッペ(アイルランド人なのになぜイタリア人の名前?その楽しい理由は映画の中でわかる)。家族を愛し息子を信じ誰も憎まない穏やかな、敬虔なカトリック信者の父親。そんな父を馬鹿にしながら子どもの時の父との思い出をよく覚えていて、でもまともな仕事につかず人生舐めてるようなジェリー。父親のこと好きなのに疎ましく煙たがっている。血の気が多く我慢強くない。誰もが思い当たる若い時の不貞腐れと怒りでいっぱいで、優しい父に素直になれない。その若者ジェリーをダニエル・デイ=ルイスが素晴らしく演じていた。だんだんに弱る父を看護しながら、挫けず再審を求め市民団体への手紙を書き続ける父の手助けをするようになる。父が死んだ。父の死を悼んで刑務所仲間が紙に火をつけて窓から外へ落とす。幾つも何枚も。夜の中のその風景は悲しく強く美しかった。

刑務所での映画鑑賞会、耳に親しんだあの物悲しい追憶のメロディーがしばらく流れる。「ゴッド・ファーザー」だ。ようやく映像が映る。マイケル(パチーノ)と父のコレオーネ(マーロン・ブランド)が庭で話すシーンだ。スーツ姿の息子とリタイアした普段着の父が公私含めた話をする。家族とはうまくいっているか?自分が死んだらバルジーニとお前を会わせる提案をしてくる者が来るだろう、そいつが裏切り者だと息子に伝える。ここでもテーマは「父と息子」、監督のセンスいいと思った。

エマ・トンプソン演じる若き弁護士は誠実で賢く法を信じる真っ当な人間だ。ジュゼッペは息子と違って人を見る目があるから彼女と共に戦うことにした(ところで日本の法曹界はどうなっているのだ?)ジュゼッペを演じたのはピート・ポスルスウェイト、「ユージュアル・サスペクツ」のコバヤシ役。一度見たら忘れられない面構えのいい俳優。そして「ユージュアル・サスペクツ」の重要出演者の一人、ガブリエル・バーンがこの映画「父の祈りを」のプロデューサーだ。バーンがアイルランド人であることを思う。

おまけ
原題 "In the Name of the Father" は自分が知っている「主の祈り」にはない。カトリックのお祈りの言葉なのかな?

コメントする (0件)
共感した! 3件)
talisman

4.0タイトル考えた方がよい

2022年9月1日
PCから投稿

イギリスの冤罪事件の実話でした。イギリス人には有名な事件だろうから原題でいいのかもしれないけど、馴染みの薄い日本人向けにこのタイトルは意味をなさない。

ルメット選手が取り上げそうな社会派のリアルガチです。俳優も含めてイギリス映画特有の重厚さにあふれた作品です。ただ、話のテンポが少し緩いかな?

イギリス独特の裁判風景は日本人には少し戸惑います。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
越後屋

他のユーザーは「父の祈りを」以外にこんな作品をCheck-inしています。