劇場公開日 1971年8月28日

「米国の成立を裏側から覗いた個人の翻弄」小さな巨人 kokobatさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0米国の成立を裏側から覗いた個人の翻弄

2024年9月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

楽しい

知的

テーマ 時代 背景地域 ストーリー 映像 演出 役者の面構え そして音楽!
反骨の、しかし真の、ジ・アメリカン・ムービー。

この徹底した白人社会批評や英雄批判、先住民と自然信仰へのシンパシーの表明は、いくらアメリカン・ニューシネマ只中といえど、我々現代人には及びもつかない勇気が必要だった事だろう。

その語り口はアーサー・ペンらしい詩情と知的な軽妙さを前作よりも自信に満ちて洗練させている。
史実に基づいていながら寓話的味わいをもち、世間では人気の没入型コンテンツのカウンターとして機能する批評的視点を崩さない本作の語り口は、後のある種の擬似実話映画のお手本として機能しているように見える。
ジョン・アーヴィング原作の映画化作品群や、「ロイヤル・テネンバウムズ」などだ。

個人的にはディック・スミスによる老人化特殊メイクアップの伝説になった代表作品と知ってから40年近く経って、今やっと観られた事にパズルピースをはめた様な小さな安堵を覚えている。

 蛇足
この映画は当時は娯楽映画として成立して受け入れられたのかも知れない。
しかし現代の一般人レビューを見る限り、これはすでに芸術として保存するしかなさそうだ。

優れた映画は万人に理解出来るとか、受け入れられるなどと考えるのは大いなる間違いだ。
時代と共に観客の劣化や変容は起こる。
絵画や小説の歴史をみるがいい。

もう現代の多くの大衆には、芸術をみる時も西洋思想的・進化論的直線思考の誤謬が蔓延っている。
「昔のものは劣ったもの」という論考前提が無批判無自覚に設定されているのだから、最早其れを一部の他人が修正するなど無理な話だ。

だからあなたがこの映画を気に入って、大衆の評価が低いからと言って気不味くなる必要はない。

堂々と「これはいいものだ」と宣うがよろしい。

kokobat