劇場公開日 1976年9月18日

「Martin Scorsese」タクシードライバー vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5Martin Scorsese

2019年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

私の中では、マーティン・スコセッシ監督作品の中でベストの作品。色々な予想を裏切りながらも、一つ一つの要素のパワーが強力なのと、それらの要素が様々な方向から一つに収集されていくのがとても映画的だなと感じました。
何と言っても、ロバート・デ・ニーロの演技がこの作品の中心にいることが一番大きな要素だと思います。そのロバートデニーロの演技に含まれる小さな仕草や、間の取り方に嘘がなくそれらが、監督のディレクティングにバッチリハマっているのが、相乗効果となり、超強力になっています。

普通に我々の身近にいるようなキャラクターではないトラヴィス。例えば、一目惚れの女性に猛アタックをしたり、身体を売っている少女に異様な正義感を見せたり。この辺は、いわゆる世間では異常者の行動です。トラヴィスのクライマックスでの行動はさらに想像を絶するものです。しかし、その全ての行動を嘘っぽく感じないのがすごい。ラクシードライバーをしている時のトラヴィスや女性の好きなレコードを買いに行ったり、重装備の自分に鏡ごしに話しかけるのは、決して以上ではないし、むしろ私たちがパブリックに公表しないような、とてもプライベートで自分の世界に入っている時にするような、ちょっと恥ずかしいような行動。それを描く勇気とそれから大きなテーマ、遠回りしないとたどり着けないような感情を喚起してくれます。

まさにストーリーテラー。常にトラヴィスの感情を追いかけるようなカメラワーク。それに加え、単体では受け入れられないようなショットも、それまでの行動や人間関係からわかるトラヴィスのキャラクターから理解でき、さらには感情移入もできるようなキャラクターアークがあることで、その奇妙なショットがブランド化していく。

マーティンスコセッシは天才であることは間違いないが、めちゃくちゃ我慢強い映画監督だろう。自分の感性に嘘をつかず、カッコつけない。泥臭く、才能のあるフィルメーカーたちが持ち寄った芸術を自分の信じる方法でオーケストレートしていくような監督だと思う。だから役者によってもガラッと色を変えるし、多様なジャンルを描くことができる。決して緩やかな道のりではないだろう。何度も途中で壁にぶつかりながらも、自分の軸から手を離さず、光を探していく忍耐強さがある。
だからこそ、自分の枠にとらわれないような、大きな大きな作品を生むのだろう。

vary1484