「泣き顔も素敵なグレース・ケリー」ダイヤルMを廻せ! ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
泣き顔も素敵なグレース・ケリー
この時代であっても、イギリスであっても、死刑判決後すぐに処刑する事はありえないと思う。また、殺人現場で捜査している捜査員に主人公が紅茶を振る舞ったり、死刑執行直前にグレース・ケリーが自宅に戻ることができたり等、他にも結構ツッコミどころも多い作品であるが、グレース・ケリーが出ているというだけで、全てを許してしまう(私だけ?笑)
最初のほうで、妻の殺害を依頼するため完全犯罪であることを長々と説明するのは、小説や舞台劇なら良いかもしれないが、映画ではもっと映像で分からせるべきではないかと思った。この時点で、もしかしたらこの映画はヒッチコックの作品としては失敗作になるのではないかと思ってしまっていた。
そして、予定通り殺人は実行されようとする。ところが、逆に土壇場で妻の方がその男をハサミで殺してしまう。この想定外の逆転劇にはびっくりさせられた。そして、その後の展開に俄然興味が増幅され、ここからこの映画に引き込まれてしまった。後でよく考えてみたら、グレース・ケリーがこんなに早い場面で死ぬわけないかと思った(笑)。あと、もし殺されていたら、映画史上最高にきれいな死体になっていたかもしれませんね。ツイン・ピークスのキャッチコピーみたいに(笑)。
その後も二転三転し、その都度またまた長い説明をされるのであり、字幕を読むのと、サスペンスなのでその言葉を頭の中で吟味するのに疲れてくる。ただし、最後に事件のカギとなった「鍵」の謎解きを刑事が説明し、刑事の予想した通り、主人公が鍵の隠し場所から鍵をとってドアを開けて部屋に入ってきて、彼が犯人であることがわかるラストは圧巻で、さすがにヒッチコックはサスペンスの神様と思った。
グレース・ケリーが、主人公(夫)がドアから入ってきたとき泣いていた。つまり、自分を殺そうとしていたのが夫だと分かったことで泣いていたのだろうか。この泣き顔のグレース・ケリーも素晴らしかった。
犯人であることがばれてしまった主人公、みんなにお酒を振る舞うのは映画の中ならではの粋なエンディングだった。