「サタジット・レイ監督は悲しい死別の連続の先になにを…」大地のうた KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
サタジット・レイ監督は悲しい死別の連続の先になにを…
若い頃、この作品を観たのは、
製作から30年近くも経った
岩波ホールでの三部作上映企画だったが、
ATGによる日本初上映も製作から
10年以上も後で、
いきなりのキネマ旬報ベストワン
選出だった。
いかにATGが果たした役割が大きかった
かが想像出来る。
内容は、
勉学は男、家事は女、
など男尊女卑も甚だしいかつての日本
を見ているようでもあったが、
親の老婆を演じたの女優には驚かされた。
果たしてどんな経歴の方なのだろうか。
これが地でなく、
演技だとしたら恐ろしいばかりだ。
世界中の映画祭の全ての助演女優賞を
差し上げても良いのではないかと思う程の
とてつもない演技だった。
さて、このシリーズ、
死による別れが頻繁に描かれた。
1部では近親の老婆と姉、2部では父と母、
そして3部では妻。
私も若くして父を亡くした時は、
人生とはこのような別れの悲しみを
繰り返していかなければならないのかと
暗たんたる気持になったものだったが、
この主人公がその辺りをどう乗り越えて
いったのか、もう2部・3部の詳細も
覚えていないし、観る機会の無い現在、
確かめるすべも無いが、
あるいはインドの死生観そのものが
このシリーズのテーマだったなのかも
知れない。
この後、なかなかインド映画には出会うこと
も無く、私が次に目にしたのは、
サタジット・レイ監督作品とは異質な、
娯楽映画「ムトゥ 踊るマハラジャ」だった。
当時は、インド各地で言葉が異なる影響も
あって、インドは世界一の映画製作国
との話を聞いていたが、ネット社会になった
現代でも変わっていないのだろうか。
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