劇場公開日 2021年3月5日

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「名作は常に新しい」続・世界残酷物語 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0名作は常に新しい

2021年3月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 リバイバル上映だが有名な映画なので鑑賞してみた。本当は一作目を先に観たかったのだが、都合で続編を先に鑑賞することになった。
 残酷物語というほど残酷ではないと、映画の冒頭に断られる。加えて一作目がイギリスで上映禁止になったことについての皮肉なアナウンスが流れる。イタリア人はアイロニカルな側面もあるのだ。
 ニュース速報のように次から次へと場面が変わり、アナウンスが的確だが些か嫌味っぽく解説を加える。映像は当時の世界各地の残酷な風習であったり、奇妙なイベントであったりする。
 60年ほど前の映画だが、映像のレトロ感を除けば不思議に古さを感じない。現在で同じことが行われていたとしても、少しも可笑しくないからだ。というか、略略同じような事例が存在していると言っても過言ではない。日本も例外ではなく、東京にはキスだけをさせる風俗店があると聞くし、東南アジアの実習生の受け入れは、形を変えた人身売買そのものだ。暴力団に管理される外国人売春婦の問題もある。現実のほうが映画よりもずっと残酷である可能性があるのだ。
 体育会系の部活では上級生が下級生を一列に並べて順に殴るなどは日常的にある事例だ。やる方はすでに心が歪んでいるが、やられる方は、自尊心が破壊され、やがて心が歪む。暴力の連鎖の誕生だ。
 日本人は身近で行なわれている人身売買の実態に気づかない。マスコミが報道しないからだが、インターネット上には情報が溢れかえっている。調べれば調べられるはずだ。日本人が人権に鈍感なのは選挙の投票率の低さに現れている。人権蹂躙の政治が続いていることに気づかない。
 改めて本作品の「新しさ」に気づいた。名作は常に新しい。鑑賞する人に啓発し問題を投げかけ思索の契機をもたらすからである。一作目も観てみよう。

耶馬英彦