「陳腐?いや、これぞ原点!」007 ドクター・ノオ pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
陳腐?いや、これぞ原点!
息子に007を知って欲しくてドクター・ノオから一緒に鑑賞していく事にした。私も一体何十年ぶりの視聴になるだろう(笑)
令和の作品群と比較すれば、もちろんとっくに陳腐化した要素ばかりで構成されているが決して侮ってはならない。ボンド以前にこのようなスパイアクションは無く、ボンドによって様々なスタイルが生み出されていったのだから。
007以前のスパイ小説は、一次大戦や二次大戦など戦時中を描いたものが主流だ。更にそれ以前となるとブルジョワ革命を題材に扱ったものやホームズ、ルパンなどミステリージャンルに登場するものとなる。(子供の頃読んだ児童文学全集には「紅はこべ」が入っていたなぁ)
しかし、冷戦構造以降の現代的な「世界を股にかけた国家諜報機関のエージェント」という映画作品はやっぱりショーン・コネリーの007こそが新時代を切り拓いたのではないだろうか。
スタイリッシュでウィットに富んでいて、酒にも女にも強く美食家で、武器の扱いにも長けた知性と野性を併せ持つ英国紳士ヒーロー。
そんな新しいスパイ像を原作者イアン・フレミング、監督テレンス・ヤング、そして誰よりもショーン・コネリーが創造してくれた。
ボンド以降、いかにもボンドスタイルを踏襲したヒーロー像も数多く生まれたし、逆説的に「アンチ・ボンド」とも言える硬派や生真面目や朴訥や不器用なスパイヒーローも一気に増えた。(誰しもがボンドのようなチャラいイケメンが好きだという訳ではないからね(笑))
近代と現代を分ける幾つかのものには、核燃料、コンピューター、宇宙開拓、地方エリアまでの電気普及、交通&運輸のグローバリゼーションなどが挙げられるのではないだろうか。
ドクター・ノオにはそれらすべてが含まれているから、今観ても充分鑑賞に耐える。
ショーン・コネリーの007は映画好きを自認する人ならば必ず観て欲しい作品の一つである。(特にキングスマンを観た人、これから観たい人には必見である(笑))
改めて見て時代を感じる場面もありはしましたが、やっぱりおもしろいですね。
アポロ計画ではなくてマーキュリー計画だったり、放射能に対する知識だったり。
ただ、その後の荒唐無稽さがどんどん激しくなっているのを見てますから、やはり原点のおもしろさを感じます。
次の007は、またショーン・コネリーみたいな能天気なジェームズボンドを見てみたいなあと思いました。