劇場公開日 1930年10月30日

「偉い人も観てね」西部戦線異状なし(1930) つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0偉い人も観てね

2024年1月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

第一次世界大戦の映画は案外少ない。兵装とか戦いかたなどを知りたくて、それならばと有名な本作を観ることにした。

とても古い作品なので映像の荒れ具合は相当なものだが、戦闘機や使われている武器などを知るには十分だった。
戦い方のほうは、ドイツ人が穴堀り得意だったばかりに西部戦線という少々特殊な状況ができてしまい塹壕戦以外はわからなかったけれど、まあ、それが見たかったわけだし問題ない。
毎日、僅か数十メートル前進するために敵の塹壕に突撃していく、敵側も同じように突撃してくる。結局ほとんど移動しない戦線のために何百何千と死んでいく。そんな戦場の雰囲気はよく描かれていたと思う。CGではない本物の迫力っていうのかな、それが本作にはあった。
ただ、血が全く出ないので、負傷や戦死した場面がちょっと分かり辛くて、みんな突然死んじゃうな、みたいな感覚になったことだけは書いておこう。やたらと死亡フラグも立てまくっていたしね。

それで内容のほうは、まず最初に驚いたのが、てっきりイギリス兵の物語だとなんの疑いも感じていなかったところに、まさかのドイツ側の物語だったこと。よくよく考えたら西部戦線なんだしドイツ側からに決まってたけど気付かないもんだね。
それで、こんな時代から敵側の視点で戦争の愚かさを描いた作品があったんだと、なんかちょっとその事に感動したけど、結局その後に二次大戦が起こっているわけで、なんとも言えない複雑な気持ちになったよね。
一本の映画がどんなに強烈に反戦をうたっても肝心の偉い人にはわからんのだろうな。

作品の中でも戦場に行かない者の戦争観は描かれている。
地図を眺めて地図の中で戦争をしている人々と、実際の戦場は違うのだ。すごく当たり前のように思うけど、その事に気付ける人は少ない。
最初の少年たちだって、最初は地図の中の戦場に行くような気持ちだったろう。それが一瞬で、本物の戦場は違うのだと気付く。そして戦争そのものの無意味さや愚かさにも目覚めていく。

シンプルで力強いメッセージを含んだ本作は、噂通りの傑作で間違いない。
各国の偉い人も是非観て下さいね。

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つとみ