「第3回アカデミー賞最優秀作品」西部戦線異状なし(1930) 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)
第3回アカデミー賞最優秀作品
タイトルは知っていたものの、昨今情勢などから興味が沸き初めて視聴した。機関銃や大砲が撃たれる中、歩兵部隊が相手の塹壕目掛けて突撃する様など、現代に生きる私達からすると正気の沙汰とは思えない。それほど命が軽く、次から次へと共に出兵した同級生や戦友たちが死んで行く。主人公のポールは重傷を負いながらなんとか生き残り、母と姉の元へ少しの間だけ帰郷する。しかし、あまりにも情勢を分かっていない父や周囲の人たち。軍人でもないただのオジサンたちが地図を広げ、ここを抜けだの、パリに一気に攻め込むべきなど、現有戦力や戦況も分かっていない机上の空論の戦略論を繰り広げる様はあまりにも痛々しい。また、国のために戦うことが美徳だと思い込む若者たちにも失望し、ここは自分の居場所では無いと予定を早めて戦場に戻るも、こんな呆気なくという終わり方。しかしそれだけ冒頭でも書いた通り命が軽いのだ。
この映画が作られたのは1930年。反戦小説を原作として作られたもので、第一次世界大戦と第二次世界大戦のほぼ中間というのはなんという皮肉か。戦争の悲惨さ、無意味さを必死に伝えようとしていることが分かる。にも関わらずこの現代社会において、第三次世界大戦すらあり得るという事態が今まさに起きている。作中で次の戦争はお偉いさん達が裸で殴り合いすればいいというセリフがあった。今も昔も犠牲者は若者や弱者ばかりだ。
コメントする