スモークのレビュー・感想・評価
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とても暖かい群像劇
2016年12月劇場鑑賞
公開は1995年、20年を経てリマスター版での上映。
当時では異例のロングランだったのをよく覚えています。
それにしても、クリスマス時期でのリバイバル上映なのが何ともニクいですね。
タイトルにあるように作中ではタバコを実に印象的に使います。
公開当時の自分はタバコを吸っていて、その頃の事が懐かしくなりました。
物語はブルックリンの片隅のありふれた日常を描いた、しかしとても暖かい群像劇。
主演のハーヴェイカイテルは、脂ののったとても良い演技を魅せてくれます。
派手な演出があるわけで無く実にシンプルな作りなのですが、何故かとても味わい深いのです。
その煙のように漂う日々の時間、そこには大切な物で溢れているんですね。
そんな事に気付かせてくれる、とても大好きな作品です。
退屈な話のはずなのに退屈しない作品
ハーベイ・カイテルが演じる街の煙草屋オーギーレンの店で、作家ポールと家出少年ラシードとオーギー自身のたわいもない話が交差する。そのたわいもない話が作品全体に散りばめられた偶然で繋がれて一つのストーリーに仕上がっており、終わってみればオヤジたちの友情と優しさが溢れた映画だった。
また日常生活にありがちな「嘘っぽい話」もところどころに登場してスパイスを加えるが、製作者は観客の予想を映像でうまく裏切る。オーギーの見知らぬ盲目のお婆さんとクリスマスを一緒に過ごした話は「まさに作り話だ」と思ったけど、その後のシーンでモノクロ映像のもっともらしい再現が入ったのでしっかり裏切られた。あのシーンは不自然な撮り方だったので、製作者もなんらかの意図を含んだのだろう。私は「嘘だと思ったかもしれないけど、実は本当だよ」という茶目っ気を受け取ったが、他の人はどうなんだろう。
一つ一つは日常の退屈な話なのに退屈しない2時間になった。
ニューヨークの片隅で"煙草の煙と与太話"
これは良い映画だわ。タバコを燻らせながら進行していく、大人の話や与太話。たわいもないのに味わい深いと感じさせる練られた脚本は、全てを見せず、観る者の想像によって短編が完結していく不思議な感覚だ。
そして、ハーヴェイ・カイテルとウィリアム・ハートの一見地味な配役なのに、これだけのインパクトを残す凄まじい演技と存在感は流石の一言。
ポスター・ジャケットで見る、抱き合っているワンカット、エンドロールまで引っ張ってそこかよ⁈最後までニクイ演出だ^_^;
【ポール・オースターが、自らの短編を絶妙な脚本で仕立て上げた”これぞ、映画!”と思わされる、素晴らしき作品。】
・オーギー・レン(ハーヴェイ・カイテル)は営む煙草屋から10年以上、毎朝8時に写真を撮っている。その数、4000枚・・・。
・作家、ポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)は妻を銀行強盗の流れ弾で失ってから、仕事が手に付かない・・。
・怪しい少年ラシード(本名はトーマス)と父サイラス(フォレスト・ウィテカー)の関係性も巧みに盛り込み物語は進む。
・”映画って良いものだな・・”と心から思える作品。
劇場で観ることが出来て、僥倖であった。
<「名画シリーズ」 として地元の映画館でかけられた作品を鑑賞。
レイトショーだったこともあって、大スクリーン独り占めだったが、劇場を後にしたときの僥倖感は、未だに覚えている。>
<2017年11月2日 イオンシネマ岡崎にて鑑賞>
大人(おじさん)のためのクリスマス寓話
ポールオースター好きなので見てみました
オースター自身タバコと写真家(ついでに映画も)愛好家なので好きがぎゅっと詰まった映画、私はタバコ吸わないし、吸う人に近寄りたくもないですが(臭い!)登場人物はじつに美味しそうに紫煙を燻らす
さてこの映画の三人のおじさん、作家のポール・ベンジャミン、煙草屋の店主オーギー、ガソリンスタンドのオーナーコールはそれぞれ内面に痛みを抱えつつガラもいいとは言えないが他者への優しさに溢れている
ラストの見せ場、オーギーの長ゼリフでやっとクリスマスの話になるが全体を通してクリスマスの寓話のようだ
おじさんたちがこうありたいと思う理想の姿
小道具はタバコと瓶ビールと野球観戦の素敵なクリスマスムービー
煙の重さのように、本作を見た後と前では何かが違っている
個人評価:4.4
男たちが語り合う最中には、常にシガーが登場し、美味しそうに燻らしている。
物語の冒頭に語られた、煙にも重さがあるという小話。吸い終わった吸殻と最初のシガーとの重さの差が煙の重さだと。
それを比喩するように、男達が話す会話劇があり、なんでもない小話だが、それを聞いた後と前とでは、少しだけ気持ちや考え方が変わっている。目には見えない違いだが、まるで煙の重さのように。
ある煙草店を中心に集まった人達の群像劇を、とても鋭く、そして見逃してしまうような出来事を繊細に描いている。
素晴らしく綺麗で優しく、人間の本質を捉えた作品であると感じる。
難しくないのに難しい?
それぞれのシーンはとても好きだ。地味だがその分余計に役者の演技がものを言う映画だ。そしてそこが素晴らしい。で私はその散りばめられた話が伏線となって最後に結集するのを待っていたものだからポカーンとしてしまった。みんなのレビューを読んで確認。これはそれぞれの物語なのね。人物に繋がりがあったというだけで。こういうのをリアルタイムで理解できない自分の不甲斐なさを感じたわー。
これだから単館映画はやめられない
Netflixで再見です。
やっぱりカッコいいなぁー。
当時この映画をきっかけに、ハーヴェイ・カイテル出演作を片っ端から観た覚えがあります。
私は完全な嫌煙家で、身体に悪くて他人に迷惑かけるタバコを高い税金払って吸う考えが全く理解できない!と思っているのですが、この映画を観ていると、タバコ選びや吸い方にも個性があってカッコいいなぁ、と、生まれ変わったら愛煙家もいいなぁ、と思えてくるから不思議です。
それくらいカッコいい。
ポールが細くて茶色いタバコを吸う前に何度か舐める仕草とか、冒頭の煙の重さを計る逸話も。なんというか…粋なんです。いちいち洒落てる。クリスマスの話も。
しかし話しているオーギーの口元にぐんぐん寄っていくカメラワークはなんなんだろう?
それとエンディング、昔話がモノクロで再現され始めた時、正直、え、やめて!見たくない!イマジネーションだけでいいし!(オーギーも老けてるし笑)と思いましたけど、見終わる頃にはすっかり抵抗もなくなっていました。
死ぬまでに、まだまだ何回も観る映画だと思います。
何気ない日常の素晴らしさ
映像美といい、キャスティングといい、そしてストーリーが 実に素晴らしい。
ラストにはTom Waitsの曲と共に、この映画のすべてを撮し出す。
人が持つ「優しさ」をテーマにしています。
引き込まれていつまでも終わって欲しくないと願ってしまう映画
舞台劇のような構成の見事さ
ハーヴェイ・カイテルの語り口はまるで咄家の話芸のように引き込まれる芸の域だ
その他の役者達も芸達者な演技だ
そして影の主役はなんと言っても下町ブルックリンのなんの事のない騒音だ
あたかも観ている自分もこの下町人情物語の登場人物になったかのように、そこにいるかのように感じられるのだ
演出も見事だ
ラストシーンのクリスマスストーリーの回想シーンは特に素晴らしい
オーギーが若い姿ではなく現在の初老の姿のまま撮られているのだ
つまり実は去年の年末ことだったのかも知れないし、本当に76年の事だったのかも知れない映像になっている
カメラの箱は当時のモデルの箱だからだ
でも当時から新品のまま老婆の家に残されていたのかも知れないともとれるのだ
オーギーが写真を撮り初めた動機がそれなのかも知れないし、そうでないかも知れない
18年前に別れた女がきっかけかも知れないしそうでないかも知れない
でも、よく観るとオーギーが語る直前に見た新聞の宝石店強盗犯の写真の右の男の名前が、財布を落とした万引き少年の名前と同じではないか
新聞の写真の左側の男が持つネームプレートはクリムとある
だからポールの家に押し入ってトーマスの居場所を訊いた男だ、右側の写真の男はあの時にいた帽子を被った子分だ
回想シーンに登場する黒人の万引き少年の顔も同じだと思う
しかも冒頭では白人少年が同じように万引きするシーンも有ったではないか
だから、全部オーギーのデマカセ?
いいや、あの時の黒人の万引き少年が大人になって強盗犯になって射殺されていたのを新聞で知って、感慨深く思い出したのかも知れないではないか
そんなことはどうでもよい
クリスマスにはいい話ききたいだろ、それだけさそういうことだ
普通のしけた人間同士が大都会の下町の片隅で肩寄せあって生きていて、街角の煙草屋で顔を合わせている、それだけのことでいいのだ
それが生きていることの価値なのだ
煙草の煙のように何の必要性もない
それでも必要なのだ
引き込まれていつまでも終わって欲しくないと願ってしまう映画でした
製作総指揮に日本人の井関惺さん、製作に他二人の二人の日本人の名前かあります
このような素晴らしい映画の製作に日本人が関わっていること誇らしく思います
日本映画の製作だけでなく、世界の舞台でもっと日本人が映画作りに活躍して欲しいと思いました
タイトルなし
ニューヨーク ブルックリンの片隅
街角の小さな煙草屋
そこに集う人間のドラマ
.
嘘と真実
ウィットに富んだ会話
最後に流れる音楽
派手な演出なく
沈黙は優しく燻らす煙草の煙の中へ
1995年公開
今観たから良いと感じることが出来たのかも
渋い大人の映画でした
.
ポール・オールスターの短編小説
「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」原作
騒がしいX'mas時期に静かに観たい映画かな
素敵な大人映画★
すごく淡々としているけれど、
じんわりと心に響く大人映画。
ストンと身に染みて、心が温かくなります。
が、これが心に響くような年齢になったのか、と。笑
若かったら早送りしちゃいそう(笑)
実生活では煙草って苦手だけど、
映画とか舞台ではぐっときてしまうのも不思議。
全員が主役
パッケージのシーンがこんなラストに来るとは。
一人一人が主役で、一人一人にしっかりストーリーがあるけど、みんな繋がりを持っていて、なんだか不思議な感じの映画でした。
ささいな人々の日常生活を淡々と描いた作品でしたので、好き嫌いが分かれる作品ではないかなと思いました。
好きな人は好きだと思います。私は苦手でした。
どうしてこんなに評価が高いのだろうと思いました。
言い様のない沈黙を煙草の煙で埋めて
ええと、これ、実は一昨年のクリスマスに投稿しようと
してたレビューです。まあほら、ね、クリスマスも
海外じゃほぼ新年のイベントじゃないですか。
縁起の良い映画ってことでひとつ許してくださいな。
(のんびりにもほどがある)
ウェイン・ワン監督、ポール・オースター脚本。
大好きな映画『スモーク』が一昨年前に
デジタルリマスターで再上映。この日は
クリスマスイヴだったので、クリスマスっぽい
映画が観たいのうと、ちょっと遠出して
初来訪の静岡シネギャラリーにて鑑賞。
舞台は1990年夏のニューヨーク、ブルックリン。
妻を亡くして以来、本を書けないでいる作家ポールと、
彼の行きつけの雑貨屋の主人オーギーを中心に語られる、
少し可笑しくて、哀しくて、そして暖かな人間模様。
……え、真夏のニューヨークを舞台にした映画の
どこがクリスマス映画だって? 本作を未見の方なら
そう思うだろうが、それはエンドロールまでのお楽しみ。
…
雑貨屋の主人オーギーのライフワークは、
同じ時間、同じ場所で写真を毎日撮り続けること。
アルバムに収められた写真は一見すると同じだが、
無数の人々の無数の表情、そのひとつひとつが毎回異なる。
それは彼/彼女が確かにその瞬間に存在し、生きていた証だ。
普段想像するのは難しいが、雑踏で通りすがる見知らぬ人々
にもこの物語の主人公や、自分自身と同じくらいの、
いやもしかするとそれ以上の密度の人生が存在している。
その優しい視線が、つらい環境に置かれた
ひとりひとりの登場人物たちに注がれている。
生き別れた父のことを理解したいと、
身分を隠してその父の仕事を手伝い続ける少年。
喪失を分かち合い受け容れて欲しかったろうに、
醜く頑なな態度しか取れずに泣いた少女。
…
タイトル『スモーク』の意味を考える。
とある場面で、父と息子との間に流れる張り詰めた沈黙。
その言い様のない沈黙を、お節介焼きな作家と雑貨屋の
煙草の煙がふんわりと埋めていく。それをきっかけに、
刺々しかった沈黙が、少しだけ柔らかい沈黙へ変わる。
この父子はきっとこの先もやっていけるだろう。
なんとなくだけど、そんな心持ちになる。
受け容れられない人間との間で流れる沈黙は
苦痛だが、逆にその沈黙が苦痛でなければ、
それはその人を受け容れ始めている証拠だ。
相手がいることを受け入れる気持ち。
相手と沈黙の時を共に過ごそうという気持ち。
煙はきっと、相手を受け入れようとする優しさだ。
冒頭でポールが語る、煙草の煙の重さを
量ったというウォルター・ローリー卿の逸話。
煙草の重さを量り、そのあと秤の上で
煙草を吸い、灰をそのまま秤に落とす。
最後に吸殻を乗せ、最初の煙草の
重さから引けば――それが煙の重さ。
それまで費やした人生と、これから費やす人生。
その合間を埋める煙。煙こそ、これまで自分の
人生以外に費やしてきたものなのかも。
…
映画の最後、オーギーがポールに語る物語は、
本当か作り話かは分からないけれど、思わず
涙が出てしまうほど堪らなく優しい物語だし、
その一方で残るわずかな後ろめたさが、
そこに真実味を与えていると思う。
「秘密を分かち合えない友達なんて友達と言えるか?」
薄く微笑みながら、旨そうに煙草を燻らせるオーギーとポール。
そして流れるモノクロのエンドロールと、しわがれ声で
トム・ウェイツが唄う『Innocent when you dream』が、
煙のように目に沁みる。
この映画を観れば、誰かと一緒に温かい食事を
摂ることの幸せさや、人に優しくすることで自分の
心が満たされる感覚を多少なりとも思い出せるはず。
遅くなりましたけれどハッピー・ニュー・イヤー。
今年も・今年は・今年こそ・善い年になるといいですね。
<了>
淡々とした作品
111席シアターを独占鑑賞。日常生活を淡々と描いた作品ですが共感できるような場面は無かった。退屈しないが面白みもない。残念ながらこの作品の良さを感じる事が出来なかった。
2017-175
よかった
オースターの『ムーンパレス』を前に読んで感動したような気がするのだが何も思い出せない。この映画もレンタルで出たばかりの時に見たけどすっかり忘れていた。
ちょっとした嘘や紙袋の仕掛けがさりげなくてうまい。因果応報に収まりすぎてないところがいい。
結局、血縁に物語を帰着させるところはあんまり乗れなかった。娘が中絶したのはつらい。生んで欲しかった。フォレスト・ウィティカーがすっかり息子の存在を忘れて生活していた。たまに思い出してあげて欲しいし、現れたら受け入れてあげてほしかった。
最後のクリスマスの話がよかった。
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