紳士協定のレビュー・感想・評価
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キング牧師の演説「最大の悲劇は…善人の沈黙である」はこの作品からの引用なのか…
「欲望という名の電車」「波止場」「エデンの東」
等、たくさんの名作で堪能させて頂いた
エリア・カザン監督だが、
この作品はこれらの前の作品にも係わらず、
制作から日本公開までなんと
40年もかかってしまったとのことで、
私がこの作品に触れることが出来たのも
「草原の輝き」等よりも後のことだった。
アカデミー作品賞映画ということで
再鑑賞したものの、
ユダヤ人に対する意識は
有色人種に対するものとは異なる
微妙さがあり、
日本人の私には理解し難い場面も
多かったが、そんなことも
日本公開が遅れた理由だったのかと
勝手に想像した。
そんな中、主人公のユダヤ人の友人が、
ヒロインを説得する台詞からは、
キング牧師の「最大の悲劇は、
悪人の圧制や残酷さではなく、
善人の沈黙である」との演説を物語化した
ような作品に感じたが、
時系列的には、彼が演説でこの作品から
引用したものだったのだろうか。
しかし、ここまで人種問題に寄り添った
カザン監督は、赤狩り事件に際は、
その政治信条から映画仲間を売る行為で
その名声を傷付けてしまう。
よく“リベラル対保守”の対立構図を
目の当たりにさせられる昨今だが、
人種差別意識と政治信条では
次元が異なることを認識させられる作品
でもあった。
古き良き米国映画らしい良心作、ただ少々物足りなさも
人種差別と闘う志と処方箋
グレゴリーペック扮する妻に先立たれ幼い息子とニューヨークで暮らす人気ライターのスカイラーグリーンは、週刊スミスの編集長と会って反ユダヤ主義の企画について話した。スカイラーは、企画にあまり乗り気ではなかったが、息子にユダヤ人をどうして嫌うのかと聞かれ企画を受ける事にした。スカイラーは、企画の主であるドロシーマクガイア扮する編集長の姪キャシーを食事に誘った。スカイラーはなかなか構想が立たず苦労していたが、ユダヤ人と同じ様に暮らしてみようと思った。しかし、ユダヤ人と名乗った時からもう壁が立ちはだかった。キャシーとも意見を違えた。果たしてスカイラーは反ユダヤ主義を書き通す事が出来るのか? 人種差別問題は難しいよね。人類皆平等と言う事は頭では分かっていてもいざと言う時に心から納得出来るかどうかは分からないよな。夫婦となるふたりは、同じ価値観をもって志をひとつに一緒にがんばれる方が好ましいと言う事だ。
紳士協定というので
理想と正義に燃えていたアメリカがフィルムのなかにある
奇麗事過ぎる気もするが、この時代にこの主題を取り上げたのはやはり立派
総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 70
演出: 60
ビジュアル: 60
音楽: 60
ユダヤ人の後は黒人、ヒスパニック、アジア人と次々に差別問題が出てくるのだが、それでもこんな時代にとにかく差別ということををいち早く正面から取り上げたのは評価できる。
子供が虐められる場面とかユダヤ人の秘書やデイブが露骨に直接差別される場面が少ないとか、差別問題を取り扱いつつもあまりきつい表現を見せないようにしている。レストランで酔っ払いにからまれるデイブなど例外はあるものの、主に差別されるのはユダヤ人のふりをしたグリゴリー・ペック。そのあたりの物語や演出は全体におとなしめで、過激な場面を少なくして視聴者の気分を害さないようにしたのか配慮が感じられる。これも1947年という時代のせいだろうか。
差別を正面きってする人は少なくなっているものの、やはり暗黙の了解で目に見えにくい差別は存在する。差別を見逃すのも偽善というのはよくわかる。しかしそれが自分に直接関わってくると、人のために自分を犠牲にして戦うという覚悟がいるわけで簡単ではない。デイブではないが日本でも外国人がアパートを見つけるのは簡単ではないと聞く。映画の内容は教科書どおりの主張で奇麗事に聞こえすぎる部分もある。それでもやはりこの時代にこんな主題を取り上げただけでも充分に立派。日本では琉球人問題も同和問題も在日朝鮮人問題もこの時代の映画に取り上げたことはなかったのではないか。人種の坩堝で差別が多いと言われるアメリカだが、その問題にいち早く気がつき進んで取り組んだのもアメリカかもしれない。
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