劇場公開日 1987年10月9日

「奇麗事過ぎる気もするが、この時代にこの主題を取り上げたのはやはり立派」紳士協定 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5奇麗事過ぎる気もするが、この時代にこの主題を取り上げたのはやはり立派

2013年3月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

難しい

総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 70
演出: 60
ビジュアル: 60
音楽: 60

 ユダヤ人の後は黒人、ヒスパニック、アジア人と次々に差別問題が出てくるのだが、それでもこんな時代にとにかく差別ということををいち早く正面から取り上げたのは評価できる。
 子供が虐められる場面とかユダヤ人の秘書やデイブが露骨に直接差別される場面が少ないとか、差別問題を取り扱いつつもあまりきつい表現を見せないようにしている。レストランで酔っ払いにからまれるデイブなど例外はあるものの、主に差別されるのはユダヤ人のふりをしたグリゴリー・ペック。そのあたりの物語や演出は全体におとなしめで、過激な場面を少なくして視聴者の気分を害さないようにしたのか配慮が感じられる。これも1947年という時代のせいだろうか。
 差別を正面きってする人は少なくなっているものの、やはり暗黙の了解で目に見えにくい差別は存在する。差別を見逃すのも偽善というのはよくわかる。しかしそれが自分に直接関わってくると、人のために自分を犠牲にして戦うという覚悟がいるわけで簡単ではない。デイブではないが日本でも外国人がアパートを見つけるのは簡単ではないと聞く。映画の内容は教科書どおりの主張で奇麗事に聞こえすぎる部分もある。それでもやはりこの時代にこんな主題を取り上げただけでも充分に立派。日本では琉球人問題も同和問題も在日朝鮮人問題もこの時代の映画に取り上げたことはなかったのではないか。人種の坩堝で差別が多いと言われるアメリカだが、その問題にいち早く気がつき進んで取り組んだのもアメリカかもしれない。

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Cape God