劇場公開日 1982年2月27日

「アシカに芸を仕込んでいるかのような」白いドレスの女 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0アシカに芸を仕込んでいるかのような

2020年11月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

邦題はデパルマ監督の本作公開前年の大ヒット映画「殺しのドレス」にあやかったものだと思います
なにしろ無名監督と無名俳優の映画なのですから

胸元の開いた白いドレスは彼女の勝負服だったのです
ヒップラインがくっきりとでる赤いタイトスカートもそうです

原題はボディヒート
なる程的確なタイトルです
今ならそのまま邦題にされたでしょう

ブラックミュージシャン好きなら、クインシー・ジョーンズの1974年の同名の名盤をどうしても思い出してしまいますが、特段関係はないと思います
でも、そのアルバムと共通する何かがあると思います

泥のように湿って重い熱気が夜になっても続くだるさ
頭がどうにかなってしまいそうな暑さ
そのアルバムは、そんな夜の音楽でした
本作もそうです

大昔の白黒映画の時代のフイルムノワールの味わいが濃厚にあります
劇伴もどことなく昔風の音楽です
クレーンを多用したカメラが効果を高めています

観終わった後の満足感は、久々に映画らしい映画を観たそれです

マティはファムファタルでしょうか?
主人公のネッドが破滅させられたのですからもちろんそうなのかも知れません

でも、本人は何も悪くないのに、その美貌に男どもが勝手に狂って破滅してしまう
彼女はそんな存在ではありませんでした
彼女こそは毒婦という呼び方が、これ以上相応ピッタリな女はいない
そんな女でした
底知れぬ恐ろしさに、私達観客は主人公と共に恐怖を覚えるのです

主人公が夜に見かけてナンパしてスルスルとモノにしてしまう序盤の展開
それが実は向こうの思う壺であったとは

ひとつ展開が進む毎に、主人公は水族館で芸を見せたアシカのようにセックスを褒美に与えられていたのです

映画だけのお話?
いえ、美人の奥さん、彼女を口説き落としたと思っているのは男だけかも知れません
本当は向こうから仕掛けられてその気にさせられただけなのかも知れません
程度が違えども女はみんなマティみたいに男を手玉に取っているのかも?
そんなことを思ってしまいました

ラストシーンはどこでしょう?
アカプルコのように見えました
また新しい獲物が彼女の毒牙にかかったようです
蛇足?
とんでもない
このラストシーンの意味
あの証拠の眼鏡はどこにいったかを教えてくれているのです
最後の最後でマティが掛けていたサングラスがクローズアップされているではありませんか
男のようにレンズだけ取り替えてあるのです

あき240