劇場公開日 2019年12月28日

  • 予告編を見る

「エド・ウッド映画にしては魅力に欠ける」死霊の盆踊り 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

0.5エド・ウッド映画にしては魅力に欠ける

2023年1月10日
iPhoneアプリから投稿

エド・ウッドは本作とどう折り合いをつけていたのだろうか。いくら低予算のやっつけ仕事とはいえ、こんなものが自らのフィルモグラフィーに加え入れられてしまうというならば首の一つや二つ括りたくなっても不思議ではない。「自分には才能がない」と自覚するには十分すぎるほど酷い映像証拠だ。

物語はないに等しく、さまざまな文化的背景を持った美女たちが真夜中の墓地でひたすらぎこちない半裸舞踊を披露していく。そこには恐怖もなければ緊張もなく、もちろんエロスとタナトスの恍惚的な交わりなどといったものが見受けられるわけもない。児戯に等しい、いやそれにも劣るほど陳腐で情感に欠けた舞踊を、これまたやる気の感じられないカメラがなんとなく追いかける。物理現象としては常に何かが動いているはずなのに、この停滞しきった映像は何なんだ。フレーム単位で眠気が倍加していく。

「もはや一周回って天才」などという手垢に塗れた批評を下す気はないが、ここまで徹底的につまらなさを追求した作品というのは確かに珍しい。ただその珍品性に90分の価値があるかというと、絶対にない。荒唐無稽ながらも映画に対する監督の熱意の燐光がそこかしこに空転的に迸っていた『プラン9・フロム・アウタースペース』を見たほうが「エド・ウッド体験」としては何倍も有意義だろう。

エド・ウッド作品の魅力は、彼の熱意と周囲のシニシズムの克明すぎるギャップにある。それはエド・ウッドだけが空回っているとも形容できるし、逆に彼の圧倒的な熱意が万物を置き去りにしているとも形容できる。どちらにせよ不遇きわまる彼の映画人生に、ティム・バートンよろしく感傷を重ね合わせる快楽というのは確かにある。しかし本作には彼の熱意がほとんど感じられない。いかにも間に合わせのエロティック・ホラーといった趣で、記名性に乏しい。誰一人やる気がなく、ゆえにただひたすらにつまらない。擁護の余地もない。どうしてこんなものが彼の代表作として知れ渡ってしまっているのか甚だ疑問だ。

因果