「史上最大のモンスター」ショーシャンクの空に R41さんの映画レビュー(感想・評価)
史上最大のモンスター
ごく最近になってこの作品がスティーブンキング氏の作品だと知った。
彼はホラー以外の作品も書くのだろうか?
あの「スタンドバイミー」にさえ、時間という名の怪物が描かれていた。
枠を広げたら、まあ人間の根幹にある邪悪さを怪物として描いたとも取れるが…
この作品は20代中盤のころに見たきりだったが、最近岡田斗司夫さんがYouTubeでこの作品の最初の10分を解説していたのを見たのでもう一度見たくなった。
さて、
この作品はレッドによるクロニクルという方式で物語が紡ぎだされている。
おそらく彼は当時を振り返ってこの物語を書いたのだろう。
刑務所に入って30年 すでに彼の家になってしまっている。
レッドは最初から主人公アンディに妙な魅力を感じる。
つまりこの物語の視点はレッドだ。
レッドは収監されている身としての自分や同じ囚人、刑務官、そして仮釈放審査委員会などを通じて「現実」というものを非常によく分析している。
彼はこの時代のこの世界の一般常識に当たる。
彼は3度目にしてようやく仮釈放されるが、他の囚人同様それは非常に困難なこと。
ブルックス爺さんは50年収監されて外に出たものの、高度成長期のアメリカはまったく別世界で、ついに自殺する。
これが彼らの現実だということを、レッドは重々承知していたのだろう。
この囚人という彼らにとって、自由を管理される場所は最初こそ苦痛ではあるが、やがてそれに慣れればそこがマイホームになってしまう。
一般的な人間性というものがそこでどのように保つことができるのかは、体験しなければわからないのだろうが、少なくとも適応する以外にはないだろう。
彼らにとって生きるすべは服従しかない。
それ以外の選択は、即独房や虐待を受けることになる。
さて、、
アンディは刑務官のボスの相続に関して知恵を授けたことが原因で、服従しかなかった刑務所に新しい風を送り込んだ。
それはやがて刑務所の図書館へつながり、所長の脱税と運営資金の洗浄の補助をすることになる。
やがてトミーが入所、彼の高校卒業資格を手伝う。
彼からアンディ自身の無罪情報を得るあたりのプロットも素晴らしかった。
そのことで所長に掛け合ったアンディは、そこで初めてこの世界の現実を思い知らされる。
しかし彼はその知恵でこの状況からの大どんでん返しを画策し始めた。
アンディはレッドにそのことを「希望」というたった一言で表現した。
『希望』
これこそがこの作品の中の巨大な怪物に違いない。
これさえあれば、それがどんな方法であっても、その苦しい状況を打破できるのだ。
キングは、このことを我々に教えたかったのだと思った。
この作品はホラーではないが、ホラーに匹敵するほどの怪物が存在していた。
その予兆が屋上作業でのビールであり、図書予算200ドルと古本の寄贈だ。
普段ビールは飲まないが、このシーンを見れば不思議に飲みたくなってしまう。
アンディが毎日州議会に手紙を書いて200ドル手に入れた時、私の頭の中に浮かんだ言葉が「成功」だった。
成功という意味の真意をそこに見た。
彼は冤罪だったかもしれない。
不運というイレギュラーは必ず人生で体験する。
その苦境に適応してもなお、「生きるのに励むか、死ぬのに励むか」という課題は存在する。
絶望しながら死を持つ生き方
それが嫌なら、いったい何がいいのか?
そこを明確にビジョンに描く。
絶望の中の夢 過去のない場所 ホテルに海 船 メキシコ湾
それらが焼き鳥の串のように一直線で思い描けたとき、その心の方位磁針に従って行動せよ。
そうすれば希望という名のモンスターがお前を導くだろう。
レッドは3度目でようやく仮釈放されるが、あのブルックスの部屋に残された文字に彼もまた現実を突きつけられていた。
ショーケース越しの拳銃と方位磁針
この両者の選択
レッドは、アンディの言葉を思い出す。
『希望』
そして彼はその希望というモンスターの存在を信じてみることにしたのだろう。
いま見ても素晴らしい作品だった。
当時はなんとなく面白かったに過ぎなかったが、また別の視点を自分の中に見た。
『希望』
この心の中に住むモンスターの力を私も信じてみたくなった。
スティーブン・キングはホラー以外にも本作もそうですし、『グリーンマイル』などヒューマンドラマやファンタジーも書ける偉大な作家ですねd(^_^o)大好きな作家です。