「不遇に屈しないことこそ人生を開く鍵。」ショーシャンクの空に ゆちこさんの映画レビュー(感想・評価)
不遇に屈しないことこそ人生を開く鍵。
絶望に直面したとき、私たちは「必死に生きること」と「必死に死ぬこと」どちらを選んでいるだろうか。まるで人生や社会そのものを表すショーシャンク刑務所での日々が、まさに私たちはそんな世界を生きてるんだと気づかせる。
ショーシャンクという地獄に慣れ、適応し、塀の外への希望を忘れる囚人たち。
そして、妻と愛人を殺した冤罪で28年もの時間を奪われ刑務所で過ごすアンディは、絶望的な状況に飲み込まれることなく「希望」と「知性」をもって、日々を豊かにしていくことと塀の外への自由に目を向け続けていた。
28年もの月日を経ても。死にたくなるような毎日を生きていても。
静かに佇み耐え凌ぐ彼の一つ一つの言動は、実は「生きることへの希望」そのものだったと、結末に向かう物語の中で明かされる展開に、そこまで伏線だったのかと驚かされる。
危険を顧みず自分の働きと引き換えにした仲間へのビールの要求、図書館設立、囚人たちに高卒資格を取得させたこと。アンディは自身が希望をつくり出すことでショーシャンクでの日々の中で正気を保ち、その地獄から逃れることへの希望も捨てていなかった。
「音楽を聴いてた。頭の中でさ。心でも。音楽は決して人から奪えない。そう思わないかい?」「心の豊かさを失っちゃダメだ。」
これらのシーンは音楽、学問、物語、文化、没頭できるものはどんな環境でも心に豊かさを与えてくれると気付かせてくれた。
そして人は積み重ねることでしか、屈しないことでしか人生に希望を見出すことができないんだと教えてくれた。
この作品は希望を持たないレッドと、希望を持ち続けたアンディを対比させながらショーシャンクでの日々を描くが、彼ら2人の壮大な友情物語でもある。仮釈放となったブルックスとレッドとで、前者は希望を見出せず自死を選択したが、レッドはアンディに希望を見出され生きることを選び迎えた結末には、ロマンも感じられる脚本に何度目かの感動を得られる。
理解しようとするほど傑作だと実感する。時代が変われば色褪せてしまうものもあるけれど、この普遍的で核心をついた強いメッセージは、色褪せることなくいつの時代も観る人の心に救いをくれるのだと思う。