ジュリアのレビュー・感想・評価
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再鑑賞を誘う魅力が…
キネマ旬報ではビスコンティの「家族の肖像」についで第2位と、
ジンネマン監督作品としては
最高位にランクされた。
ジンネマン監督はこの作品を通じて
何を伝えたかったのか。
ジュリアは殺され、
彼女の子供は見つからず、
彼女の実家からも見捨てられ、
そしてリリアン自身、ダシールを失い、
一人孤独感漂うボート上での
魚釣りのシーンで終える。
リリアンの人生、全てにおいて
寂寥感に苛まれ続けたかのような
描写の作品だ。
人生は、
友人を失う等、数々の喪失がつきまとい、
それでも人生は続く、と語っているのか、
私にとって、まだまだこの作品への理解が
進んでいない思いがある。
この作品、ジェーン・フォンダが
主役として出ずっぱりだが、
登場時間のさほど長くない
ヴネッサ・レッドグレーヴの
存在感が有り過ぎ、
フォンダの成長譚を置き去りにした
感じもあり、
正に“邦題”通りの
レッドグレーヴ/ジュリアのための映画
のようにさえ感じさせられてしまうほどだ。
さて、メリル・ストリープは後年、
やはりナチスによる被害者役を
演じることになる「ソフィーの選択」で
アカデミー主演女優賞を受賞する。
「ジュリア」の原作に
主役二人の同性愛的要素が高いのか
私には不明だが、
彼女と彼女の家族にまつわるシーンが、
この映画として
必ずしも必要だったとは思えなかった。
いくつかの納得のいかないシーンこそ
あったが、
しかし、ジンネマン監督作品として
「ジャッカルの日」と並ぶ
サスペンス映画の傑作と思うと共に、
なんとも言えない緊迫感に溢れ、
スタッフの平和への希求も感じながら、
己の人生に係わった人々を
自分の心にどう留め置くか等、
早世した親友に想いを寄せさせる
この「ジュリア」には、
「ジャッカル…」以上に
再鑑賞を誘う魅力がある。
女性の友情を美しくまとめた”女性映画”の決定版にして、ジンネマン監督の熟練の演出美が最良
ベトナム戦争が混迷の末終わりを遂げてアメリカの威信が失墜した同時期に、自立した女性が主人公のアメリカ映画が顕在化した1970年代後半の、所謂”女性映画”を代表する傑作。フレッド・ジンネマン監督は、代表作「山河遥かなり」「真昼の決闘」「地上より永遠に」「尼僧物語」「わが命つきるとも」「ジャッカルの日」で分かるように、シーンやシークエンスの意図が明確な骨格の確りした映画文体が特徴の堅実で正攻法の演出をする、一種の完璧主義者の芸術家だった。その良質の特徴は、この作品でも完成度高く表現されていて、ジンネマン監督の最高傑作と云えると思う。それは、女性同士の友情を描いて、その美しさが他に類を見ないからであり、主人公リリアン・ヘルマンの回想録を脚色したアルビン・サージェントのドラマ構成が見事な盛り上がりを創造しているからだ。その最もたるものが、ジュリアの政治運動資金をリリアンがベルリンで手渡すシークエンスで、その前のサスペンスの緊張感が生む余韻が素晴らしい効果を生んでいる。堅実さと「ジャッカルの日」で見せたサスペンス技巧が溶け合う、ジンネマン監督の熟練の演出美が素晴らしい。また、リリアンのジェーン・ホンダとジュリアのバネッサ・レッドグレープの演技力と、それを支える名脇役ジェースン・ロバーツとマクシミリアン・シェルの滋味も特筆すべきもの。「裸足のイサドラ」と並ぶレッドグレープの名演が個人的には好感度高いが、4人すべてが上質の演技で重厚なアンサンブルのカルテットを奏でる。フォンダとシェルが惜しくもアカデミー賞を逸して勿体ないと思えるほどに感心せずにはいられなかった。これは、映画と演劇に長けた人ほど楽しむべき作品だと思う。
ならば何故もっと評価しないのか。上記の賛辞とは別に、完璧なものが持つ、他方からの不満が生まれる贅沢な注文であり、我儘な要求が発生する創造の辛さがある。つまり、第二次世界大戦の背景が美しいシーンとして再現され、女性同士の美しい友情と男女の慈しむ愛情が並行して巧みに描かれた良さとは別に、リアリズムのもつ感覚的な味わいがジンネマン監督の映像作りから除外されたことへの不満だ。または、優れた人間をヒロイックに描く理想主義の作為に抱く人間味臭い反感かも知れない。芸術には破綻が必要とする、個人的信条も少なからずある。これは優れた作品に付きまとう答えのない追求であり、だからこそ面白いのではあるが。
1978年 10月26日 ギンレイホール
ファシズム
アメリカ女流劇作家のリリアン・ヘルマンの回顧録。時代はファシズムが横行している第二次世界大戦前夜だ。リリーとジュリアは2人とも裕福な家庭で育てられていたが、ジュリアはウィーンへ渡ってから労働者の運動に参加するようになった。なかなか会えない。久しぶりに再会したのはジュリアがデモの弾圧によって重傷を負ったとき。しばらくは執筆活動に専念していたが、リリーの戯曲が評価され、またもやヨーロッパへ。
ヨハンという男に声をかけられジュリアの金を活動家に渡してほしいと危険な任務を頼まれてしまう。ここから列車で移動するリリーが凄い。金の受け渡し方法は一切伝えられず、まるで伝言ゲームのように運搬は進む。同じコンパートメントで同席だった女性も仲間だったし、きょろきょろしながら恐怖と不安におののく姿。しかし任務を果たさないとジュリアに会えない。そんな切なさが伝わってくる。
ジュリアが義足だったことにも驚いてしまうが、彼女の凛々しさはリリーを励ましてくれるような。ジェーン・フォンダの心をそのまま共有できるかのような錯覚に陥るのです。戦争の描写はないけど、彼女たちがユダヤ人だったこともあって恐怖感も増す。ジュリアの死が伝えられ、ロンドンへ渡っても彼女の存在ごと抹殺されたミステリアスな状況。託されたリリーと名付けられた娘も見当たらないし、大切な思い出すら葬り去られた感覚に・・・
夫にも先立たれ、残りの人生を孤独なまま過ごさなければならないリリアン・ヘルマンを想像すると、じわじわと悲しみが伝わってくる・・・そんな映画だ。
ジンネマンの良心 と リリアンの「嘘」
「ハリウッドの良心」と呼ばれる ジンネマン監督の傑作である
が、しかし…
ヘルマンの自伝を 下敷にしていて、彼女は自分を 反ナチ闘士、英雄として神格化してしまった… つまりは フィクションである
物語として 完成させればよかったのに…
また、左翼思想の持主で ソ連共産党の影響下にあった (トロツキーの 米国亡命阻止か?)
これについて、ヘルマンと メアリー・マッカーシー
(「グループ」の作家/批評家)の闘いは、有名である
マスコミ総出で ジュリアを探したが、不明
だが、ダシール・ハメット(ジェイソン・ロバーズ、いい味)との、結婚は 防波堤にもなった…
ハメットはやり切れないが!
ちなみに ジュリアのモデルと言われる、
ミュリエル・ガーディナーが 回顧録(1983) を出版、ヘルマンとの関係を否定
翌年 ヘルマンは没している
ホロコーストで 両親を殺された ジンネマン監督の真摯な想いを、踏みにじることにもなり残念である
ヴァネッサ・レッドグレイブは ジュリアの役で、
アカデミー助演女優賞を獲っている
彼女は PLO活動を支援しており、受賞時に「シオニストのごろつきども… 」と言って会場を騒然とさせた
(妨害工作が あったらしい… )
幼い私は TVで観ており、呆然とした
でも、あれから ジュリアと重なる部分も かなりあり、ヴァネッサに注目し続けています
女性が活躍する時代の先駆けの人物を描き、現代の女性にエールを送る
ジュリアの名はジュリアスシーザーの名前が女性に転じたものが語源
つまり女性の英雄を象徴している
少女時代からの親友がその身を犠牲にした社会主義活動家になり、ユダヤ人でありながら第二次大戦前夜のナチスドイツで地下活動するに至る女傑だ
彼女に憧れ少しでも近づこうと背伸びをする主人公は、絶えず心理的に無理をしているから、癇癪持ちで気を静めるために煙草を始終吸っていないと落ち着かない、つまり心のキャパが少ない英雄には程遠いただの人間だ
だからジュリアに感化されて男の様な性格に見えるが、着ている服はフェミニンで料理だってこなしている、本当は女性らしい女性なのだ
かなり年上の包容力ある男性と事実婚を続けて精神の安定を得ているのだ
しかし男女の間は対等であって男に隷続しているわけではない
男も彼女を縛りつけることはない
そんな関係性だ
本作は女性が自立して活躍する時代の先駆けの人物を描くのがテーマだ
製作は1977年
米国で女性の社会進出が一段と本格的になってきた時期に作られた本作は、そんな女性達へのエールだったのだ
ジュリアに再会すべく、戦争迫るベルリンに行く物語の柱はサスペンスとしても良く出来ており手に汗握るできばえ
映像は美しく撮影が素晴らしい
ヴァネッサ・レッドグレープに出会った映画
学生のとき、友達と見に行った。以来、私とその友達の絆みたいな映画(と、勝手に私は想ってる)。彼女とはほとんど会わなくて手紙のやり取りをする程度だが、彼女は私の親友で、私にとってのジュリア=ヴァネッサだ。
世の中の不公平、理不尽に気がついた頃だったので、ジュリアの成長と行動には心から共感した。一方で、私があの時代に生まれていたら果たしてジュリアみたいに動けるかと自問自答して、苦しかった。
ヴァネッサ・レッドグレープは本当に素晴らしい女優で、好きを超えて尊敬に値する。ルーニー・マーラ、シアーシャ・ローナンが演じた役の何十年後の役をヴァネッサが演じることで、映画がきちんとおさまり、説得力が生まれる。これからもずっと、知的で自立した、輝く瞳の役を演じ続けて欲しい。
バネッサvsジェーン
主人公の人生を通り過ぎていった素晴らしい友人
総合:85点
ストーリー: 90
キャスト: 85
演出: 90
ビジュアル: 80
音楽: 70
激動の世の中を社会活動家・反ナチレジスタンスとして強い意志と行動力を持って生きたジュリア。彼女の親友で劇作家だった主人公の人生を通してそれを描く秀作。見終わった後の寂寥感がいい。
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