「当時の三つの衝撃」ジュラシック・パーク Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
当時の三つの衝撃
総合:70点 ( ストーリー:50点|キャスト:65点|演出:70点|ビジュアル:85点|音楽:70点 )
アニメでもなく、ぬいぐるみでもない。実際に撮影したかのように違和感なく恐竜が登場して動き出す。まずこれがとにかく衝撃だった。全ての恐竜がCGではなく作り物の実写の恐竜が登場して質感が下がる場面もたくさんあったが、いきなり登場して二本足で立ち上がって植物を食べるブラキオサウルスと、草原を失踪するガリミムスの群れと、襲ってくるティラノサウルスとヴェロキラプトルの自然な映像技術は本当に素晴らしかった。
これを観て、こんな映像を楽しめる時代がとうとう来たんだと実感した。その意味を込めて映像には高めの配点。
次に、はるか昔に絶滅した恐竜をどうやって現代に甦らせるのかを科学的に示した。どこかに恐竜がひっそりと人類に知られることなく生きていたのでもなく、時間旅行をしたり異世界に行って恐竜に会うのでもなく、琥珀に閉じ込められた恐竜の血を吸った蚊から遺伝子を取り出して恐竜を再生する。マイケル・クライトンらしい、科学を使った現実に起こりそうな設定も素晴らしかった。当時の最新で流行だった遺伝子技術というものを物語に大々的に取り入れて、映画のCGではなく本当に将来は恐竜が再生できてそれを実際に見ることが出来るのかもしれないということを示唆し、視聴者の好奇心を大いに刺激してくれた。
第三に、それまではのろまで頭の悪い冷血動物と言われていた恐竜が、研究の進歩でそうではないということがわかってきて、それを設定に取り入れているのも良かった。ただ大きくて力の強い爬虫類ではなく、敏捷で頭の良い高等動物が襲ってくるのはまた違う恐怖がある。
もっとも全てが良かったわけではなく、恐竜の描き方には不満もある。肉食恐竜が怖いというのはわかるが、草食恐竜は大人しくて害がなくていい恐竜だという描き方は極端で、スピルバーグらしい単純思考に陥っている。その他にも肉食恐竜の嗅覚で人に気が付けないなど、恐竜の描き方にはおかしなところがいくつかあった。
設定は良くても悪いやつに報いがある単純な物語はたいしたものではないし、この大人にとっても圧倒的不利な状況で子供が活躍する内容にしているのもくだらないのだが、上記の三つの衝撃があった。『ジョーズ』と内容としては似たり寄ったりの作品だけど、映像技術の進歩を筆頭に、当時の時代の最先端を行く作品だった。