劇場公開日 1996年10月26日

「こちらまで顔がおかしくなって怖くなるほどに」ザ・ファン marumeroさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 こちらまで顔がおかしくなって怖くなるほどに

2025年8月10日
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鑑賞方法:TV地上波

怖い

興奮

驚く

シナリオ(主に場面構成や人物の動き等)には少し強引なところがあるように思います。おそらくはギルというキャラクターを際立たせるために他ならないのでしょうが、ストーリー上では、少し作為的に感じてしまいました。

とはいえ(いや、やはり、というべきか)、本作の最たる魅力というべきは、ギルというキャラクターに他ならないでしょう。
先ずもってキャラクター設定が見事です。性格、気質、境遇、思想が明確で、機微を上手く演出されています。とても魅力的です。
それもロバート・デ・ニーロの演技力があってこそだということは言わずもがなでしょうが、敢えて言わせてください。
彼の演技の真髄は、その表情にあると個人的には思っています。
一瞬たりとも同じ表情に留まりません。動きのない静かな目が、次の瞬間にはわずかに細まり、唐突に威圧感と緊張感をピリピリとさせます。唇を固く結んで口角をグニャリと上げて、皮肉のこもった感情が滲み出ます。次には眉毛が上げて目尻を下げて、なんとも無邪気な笑みが浮かぶのです。しかしその笑みも束の間、額にしわが寄り、眉がぐっと寄せられると、怒りとも悲しみともつかぬ複雑な感情が滲み出した……かと思えば、ホヘーと息の音が聞こえそうなへの字口を開けて下顎を舌で押し下げるような間抜け面を見せてくれます。
釣られてこちらまでおかしな表情になってしまいます。それくらい彼の演技にのめり込んでしまいます。できるはずもないのに共鳴してしまっているのです。ふと我に返り、怖くなるほどに。

marumero
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