ザ・ファン

劇場公開日:1996年10月26日

解説

人気野球選手への過剰な思い入れのあまり、次々と異常な行動を重ねていく男の犯罪を描いたサイコ・スリラー。売れっ子サスペンス作家、ピーター・エイブラハムズ初の映画化で、彼の同名長編小説(邦訳・早川書房)を、米NBCの人気TVドラマシリース『チアーズ』のフォフ・サットンが脚色。監督には「クリムゾン・タイド」のトニー・スコットがあたり、撮影のダリウス・ウォルスキー、音楽のハンス・ジマーも同作に続いての参加。製作は「フォレスト・ガンプ 一期一会」のウェンディ・ファイナーマン、エグゼクティヴ・プロデューサーはビル・アンガー、ジェームズ・W・スコッチドポール、バリー・M・オズボーンの共同。美術はアイダ・ランダム、編集はクリスチャン・ワグナーとクレール・シンプソンの共同。服装の変化が犯人の心理の移り変わりを表しているという衣裳デザインは、「カジノ」に続いてデ・ニーロの衣裳を担当するリタ・ライアックと、ダニエル・オルランディ。また、連続出場の世界記録を達成した大リーガーのカル・リプケン・ジュニアがテクニカル・アドバイザーを務めたほか、95年までフィリーズで活躍したジョン・クラックが5番打者役で出場しているのをはじめ、プロ選手が多数出演しているのも話題に。主演は「カジノ」「ヒート」のロバート・デ・ニーロと「マネートレイン」のウェズリー・スナイプス。共演は「ボーイズ・ライフ」に続いてデ・ニーロと共演となるエレン・バーキン、「3人のエンジェル」のジョン・レグイザモ、「ユージュアル・サスペクツ」のベニチオ・デル・トロほか。

1996年製作/118分/アメリカ
原題または英題:The Fan
配給:日本ヘラルド映画配給(日本ヘラルド映画=ポニーキャニオン提供)
劇場公開日:1996年10月26日

あらすじ

サンフランシスコ、4月。中年のナイフのセールスマン、ギル(ロバート・デ・ニーロ)が熱狂的に応援する地元ジャイアンツの開幕試合の日が来た。今年はブレーブスから4千万ドルで獲得した大物スラッガー、ボビー(ウェズリー・スナイプス)がホームタウンに戻ってきた。ラジオの女性スポーツ・キャスター、ジュエル(エレン・バーキン)は番組中、ボビーにインタビューを試みた。前年は故障者リストに入り春のキャンプにも参加していないボビーに、彼女が「本当に4千万ドルに値するか」と辛辣な質問をしたところ、番組に参加した視聴者代表のギルはボビーの偉大さをまくし立て、ファンとしてエールを送った。一方、ラッキーナンバーが11番のボビーは、背番号が33番と知って激怒する。その背番号は彼のライバル、プリモ(ベニチオ・デル・トロ)が付けていた。ボビーは背番号を譲るようにエージェントのマニー(ジョン・レグイザモ)に交渉させるが、50万ドルという値をつけて断ってきた。一方、生活が荒れていたギルは、別れた妻エレンの元にいる幼い息子リッチーを開幕戦に誘った。エレンはギルの素行に注意し、彼から遠ざけようとしていた。試合が始まったが、ギルは客と面会の予定を入れてしまい、試合に集中できない。ボビーは前日、重病の少年に約束したとおり、満塁でホームランを打った。ギルは球場を後に車を飛ばして客の元へ急ぐが、相手は予定を変更して球場に行ったと聞かされて激怒した。球場に戻ると、息子は親切な老夫婦が家に連れ帰った後だった。ギルは上司からクビを言い渡され、エレンからも今後は息子に近づかないという、裁判所からの拘束令状を受け取る。全てを失ったギルは、人生の拠り所をボビーに向けた。そのボビーはスランプに陥っていた。ギルは試合後、ロッカールームに電話をかけてみたところ、ボビーが簡単に電話に出たことに驚く。ボビーは望めば手の届くところにいる。ギルは野球選手のたまり場のバーで例の背番号問題を聞きつけ、それがスランプの原因と思い込んだ彼は、密かにプリモに接近してナイフで刺殺する。ボビーはライバルが消えたことを契機に、スランプから脱出した。ボビーをつけ回していたギルは、ボビーの海辺の家で、溺れていた彼の息子ショーンを助ける。ボビーは命の恩人のギルを家に招くが、彼の言動にはおかしなことが目立つ。その異常性に気づいた時、既にショーンはギルに誘拐されていた。ギルはボビーにショーンの解放の条件として「俺のためにホームランを打ってくれ。さもなくば息子は殺す」と言う。だが、打席に立つボビーの心は千々に乱れて打てない。だが、ついに長打を飛ばしたボビーはランニングホームランを狙って本塁に滑り込む。タイミングはセーフだったが、審判の判定はアウト。だが、その審判は何とギルだった。ギルは警官隊に射殺され、ショーンも無事に救出された。

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映画レビュー

4.0 こちらまで顔がおかしくなって怖くなるほどに

2025年8月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:TV地上波

怖い

興奮

驚く

シナリオ(主に場面構成や人物の動き等)には少し強引なところがあるように思います。おそらくはギルというキャラクターを際立たせるために他ならないのでしょうが、ストーリー上では、少し作為的に感じてしまいました。

とはいえ(いや、やはり、というべきか)、本作の最たる魅力というべきは、ギルというキャラクターに他ならないでしょう。
先ずもってキャラクター設定が見事です。性格、気質、境遇、思想が明確で、機微を上手く演出されています。とても魅力的です。
それもロバート・デ・ニーロの演技力があってこそだということは言わずもがなでしょうが、敢えて言わせてください。
彼の演技の真髄は、その表情にあると個人的には思っています。
一瞬たりとも同じ表情に留まりません。動きのない静かな目が、次の瞬間にはわずかに細まり、唐突に威圧感と緊張感をピリピリとさせます。唇を固く結んで口角をグニャリと上げて、皮肉のこもった感情が滲み出ます。次には眉毛が上げて目尻を下げて、なんとも無邪気な笑みが浮かぶのです。しかしその笑みも束の間、額にしわが寄り、眉がぐっと寄せられると、怒りとも悲しみともつかぬ複雑な感情が滲み出した……かと思えば、ホヘーと息の音が聞こえそうなへの字口を開けて下顎を舌で押し下げるような間抜け面を見せてくれます。
釣られてこちらまでおかしな表情になってしまいます。それくらい彼の演技にのめり込んでしまいます。できるはずもないのに共鳴してしまっているのです。ふと我に返り、怖くなるほどに。

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marumero

3.5 【”ファンは大事だろ?”今作は野球を異常に愛する男が父が起こした会社の営業マンを首になり、贔屓のスラッガーを異常なまでに”応援”するデ・ニーロスマイルが哀しくも恐ろしき作品である。】

2025年8月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

興奮

■メジャーリーグのジャイアンツに4000万ドルで引き抜かれたスター選手・ボビー・レイバーン(ウェズリー・スナイプス)の大ファンであるギル・レナード(ロバート・デ・ニーロ)は、父が起こした会社”レナード&ギルティ”の営業成績が上がらない営業マン。
 商談の日にもかかわらず息子を連れて開幕戦へ行き、途中で抜けるも商談の時間に間に合わず首になる。
 その後、別れた妻からは愛する息子への接近禁止令を受け取る羽目になる。
 彼は全てを失い、ボビー・レイバーンがスランプになった際には、レーバーンのチームメイトながらライバルのフアン・プリモ(ベニチオ・デル・トロ)を、サウナルームで刺し殺し、ボビー・レイバーンは打順が上がり、スランプを脱する。その事でギル・レナードの妄執は加速し、レイバーンの息子ショーンを誘拐し”ホームランを打たないと、息子を殺す。”と連絡してくるのであった。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・観ていてロバート・デ・ニーロ演じるボビー・レイバーンの狂信的なファン、ギル・レナードは、実はどこにでもいる様な男ではないか、と思ってしまった。
 彼の自尊心は、父が起こした会社の営業マンを首になり、愛する息子とは会えず、ずたずたになって行くのである。
 これは、現在でも起こるストーカー心理に繋がる。

・その姿を、ロバート・デ・ニーロ独特のデ・ニーロスマイル(あらゆる感情が読み取れる、ロバート・デ・ニーロしかできない笑顔)が、様々なシーンで炸裂するのである。

・ギル・レナードはボビー・レイバーンを狂的に応援するあまり、ライバルのフアン・プリモを刺し殺し、更にはボビー・レイバーンの息子ショーンを誘拐し、”ホームランを打て。でないと息子を殺す。”と指示するのである。

■雨中の、レイバーンの打席のシーンはナカナカである。敬遠されそうになるも、激しい雨のために中断。そして試合再開後にレイバーンはホームラン性の打球を放つが、ギリギリスタンドには入らない。
 だが、レイバーンは息子のために三塁コーチの指示に従わず、ホームにヘッドスライディングをし、セーフに見えたが、アンパイアはまさかの”アウト”コール。
 アンパイアは、雨中中断の際に、ギル・レナードが成り代わっていたのである。
 そして、マウンドに立ったギル・レナードは、”レナード&ギルティ”の投げナイフを振りかざすのだが、射殺される。

<そして、警察はレイバーンの息子ショーンをギル・レナードがリトル・リーグ時代にヒーローだった球場のボロイ部屋で見つけるのである。
 その部屋に飾られていた、ギル・レナードのリトル・リーグ時代に獲得した多くのトロフィー、黄ばんだ彼がホームランを打った時の新聞・・。
 今作は野球を異常に愛する男が父が起こした会社の営業マンを首になり、贔屓のスラッガーを異常なまでに”応援”するデ・ニーロスマイルが哀しくも恐ろしき作品なのである。>

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NOBU

5.0 今の人生を生きていない男

2025年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 ロバート・デ・ニーロ演じるギルの人生の最盛期はリトルリーグで活躍していた頃で、その頃の彼は今の人生を良くしようと未来に向けて努力していたのだろう。それが大人になるにつれて、未来に向けて努力するのを止めてしまい、過去に囚われるようになった。彼が野球に執着するのはそういった輝かしい過去の投影のため。それが原因で仕事もうだつが上がらず、夫婦仲にも亀裂が入った。夫婦仲については、おそらく以前から妻の蓄積された不満があったはずだ。球場に子供を置き去りにしたのが決定打だったのだろう。

 要するに、彼は今の人生を生きていないように見える。ビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』の落ちぶれた女優を連想させる映画だった。

 今作はもっと全編に渡ってギルの狂気を見せつけてくる映画なのかと思いきや、前半の彼は割と普通の人。でもトニー・スコット監督の演出がとても上手くて飽きさせない。音楽、カメラワーク、光や雨などの効果的な使い方が緊張感を出せていた。彼の他の映画でも思ったけど、演出が一流の監督だな。

 ロバート・デ・ニーロの怪演も光る。彼が不機嫌になったときの演技は迫力があって良かった。

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共感した! 3件)
根岸 圭一

3.0 熱烈ファンは怖いねえ

2025年2月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

家族は離れ、父からついだ会社も失い、でも自分は悪くない。そんな理屈なのかなあ。子供を蹴飛ばしてまで捕れもしないほど離れたファールフライを捕りに走るシーンが、彼の真の姿か。
主人公がどんどん壊れていくのが哀しくて。ひどいヤジまでは許せたとしても、それ以上はな。
ロバート・デ・ニーロの演技力なくしてここまでの作品になったかなあ。安っぽくならず、物語の均衡を保った。

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Bluetom2020