「マフィアの悲哀と各シーンの美しさ。」ゴッドファーザー ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
マフィアの悲哀と各シーンの美しさ。
パロディ作品は観たことあったけど、ようやく本家を初鑑賞。
マフィアを格好良く描いた作品という勝手な先行イメージがあったんだけど、実際に観てみるとコルレオーネ一家というファミリーの悲哀が描かれてた印象が強い。
まず印象に残ってるのはドン(ビトーも、跡を継いだマイケルも…)の哀しそうな瞳ともの静かな話し方。
ファミリーのトップでも高圧さやイキった感じは全くなく、静かに相手を威圧したり、静かに周りに指示を出す。敵組織や裏切り者には冷徹で殺しもいとわないけど、そして家族には優しい。
あと家族や兄弟の中でも性格が違って、望む生き方とマフィアとしての適性が噛み合わない彼らがリアルで切なかった。
本人も周囲もカタギとして生きていくつもりだったマイケルが、結果的に最もドンの適性を持っていて次代ドン・コルレオーネになっていくのが切ないんだよな…。
あと後継者になるつもりだったけど直情型の性格が仇となって、結果的に抗争で死んでしまったケニーも。
そして、マイケルがマフィアとして生きることになったことをパパコルレオーネが哀しそうしている様子も。
あとこの作品、同時進行で進む場面の対比が美しくて印象的だった。
冒頭、華やかなクレメンザの結婚式の裏ではドンへの血生臭い相談事が行われているし(ドンは嫌そう。笑)、終盤、生まれたばかりの子どもの名付けの厳かな儀式の裏では、ファミリー同士の抗争の粛清が行われている。
マイケルがさまざまなことを神に誓っている間に、彼の指示でたくさんの者が殺されていくんだよ。
この演出しびれるよね。美しい。怖い…。
あと南イタリアのマイケルのひとときのロマンスが切なかったな。マフィアの生活から離れた先で愛する人を得たのにマフィアのごたごたにそれを奪われるマイケル。
このシーンに関しては「マイケル…!ケイという女性を待たせておきながら…!!」とマイケルに憤慨しながら観てたけど、マフィアとして生きるしかないことを彼に自覚させるシーンだったのかな…と観終わってからショボンとした。
ケイに関してはラスト、マイケルが完全に「ドン・コルレオーネ」になって、ケイが不安そうにマイケルを見つめる前で扉が閉じられて終わるシーン、格好良いけど切ないよね。
あと最近個人的に「ヤクザと家族」という映画を観てたから色々共通点を見出してしまって、「日本のヤクザも海外のマフィアも時代の流れで衰退していく様子や命を危険にさらす生業の悲哀は通じる部分があるのだなあ…」と思った(本作のほうが時代としてはだいぶ前に作られたものではあるけど)。
観終わった後切なくてたまらなくなったけど、でも美しい作品だった。