「【”人生の価値とは何か。”重くて深いテーマを、官僚主義の縦割り組織が蔓延る市民の願いを盥回しにする役人の愚かしさと、余命幾許もない自らの生き方を悔いた主人公の崇高な行動を対比させるように描いた作品。】」生きる(1952) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”人生の価値とは何か。”重くて深いテーマを、官僚主義の縦割り組織が蔓延る市民の願いを盥回しにする役人の愚かしさと、余命幾許もない自らの生き方を悔いた主人公の崇高な行動を対比させるように描いた作品。】
ー 30年間近く無欠勤で働いてきた市役所の市民課長・渡辺(志村喬)が、胃癌に侵されている事を知り、深い絶望と孤独を感じつつ、生命力溢れる元同僚の若き娘と出会った事から市民の為に暗渠埋め立てと公園建設に奔走する。ー
■数十年振りに鑑賞し、印象的なシーンを記す。<Caution! 内容に触れています。>
1.渡辺が2シーンで歌う”ゴンドラの唄”
・最初は、居酒屋で出会った作家志望の男に連れられて歓楽街を自暴自棄で回っている時にバーで自らリクエストし、涙を流しながら唄う姿。
・二度目は、完成した公園で雪降る中、ブランコに乗って満足げな表情で唄う、余りに有名なシーン。
■見事なる対比である。
2.元同僚の若き娘と出会った時に、涙を流しながら血を吐くように呟いた言葉。
”私は、30年市役所で何をしていたのか・・。”
3.渡辺の通夜で、公園建設を嘆願していた女性達が多数訪れ涙を流すシーンと、その姿を見て愚かしき助役たち上役が居なくなった後に、下級官吏の男達が交わす会話。
そして、徐々に明らかになる公園建設の為にそれまで死んだようにハンコを押す毎日を過ごしていた渡辺が、奔走する姿が描かれるシーン。
部署の壁を乗り越え、助役に嘆願し、ヤクザの脅しにもめげずに病んだ身体を押して働く姿。
4.渡辺が夕焼けを見て”30年振りに見た・・。美しい”と呟くシーン。
<今作は、トルストイの”イワン・イリッチの死”が底本であるが、黒沢明監督が、大幅に改編したヒューマンドラマである。
私事で恐縮であるが、就職が決まった際に父から”観ておきなさい。”と言われた映画であるが、当時”イワン・イリッチの死”を読んでいた事と、社会組織を知らなかったので申し訳ないが余り記憶に残っていなかった。
が、あれから幾星霜。
私が仕事をする中で頻繁に言っている”個人の名を残す仕事ではなく、組織とそこで働く同僚のモチベ―ションを発展させる仕事をしよう。”という言葉がこの作品では見事に表現されており、父親の慧眼に感謝したい気持ちになった作品である。
渡辺を演じた、故志村喬さんが当時47歳であった事にも驚いたなあ。-
ビル・ナイの主演でリメイクされたと聞きました。
脚本がカズオ・イシグロ。
楽しみですね。
私もかなり前に観ました。
志村喬さんが47歳だったんですか?
「東京物語」の笠智衆も老けてますが、それ以上ですね。
お邪魔しました。