「襲撃の謎は紐解かれたが、恐怖は今でも…」ゴースト&ダークネス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
襲撃の謎は紐解かれたが、恐怖は今でも…
百獣の王、ライオン。
『ライオン・キング』などでは勇ましく、カッコいいが、本作のライオンだけはご勘弁を。
身の毛がよだち、実話で戦慄する…。
1898年、イギリス領東アフリカ(現・ケニア)のツァボ川に鉄橋を架ける任命を受けた橋梁技師のパターソン大佐。現地で工場の指揮を執る中、恐ろしい問題と直面する。彼らを、2頭の人食いライオンが襲う…。
ライオンが人を襲うってのは別に驚く事じゃない。
しかし、この事件で驚きなのは、異様に執拗に人のみ狙う事。
さらに、その人を食べる。
ライオンは一般的に人は食べないという。
草むらから忍び寄り、じっと狙い、時にはテントや家屋に侵入してまで…。
肉食動物は一度人の血の味を覚えたら、次もまた襲い続けるという。
たまたま目の前に人が居て、食べて、味を覚えて…この2頭の人食いライオンはそんなんじゃない。
野生の本能とかでもなく、何か意思を持って、人を襲っているとしか思えない。
“幽霊(ゴースト)”と“暗闇(ダークネス)”。この2頭は、本当にライオンか、それとも悪魔か…?
パターソンを悩ますのはライオンの他にも、鉄道会社からの圧。ライオン襲撃や被害者など眼中に無く、期日までに橋を完成させろ。
ライオンを恐れる現地人との確執。理解者もいるが、やがて孤立していく…。
史実では、2頭を退治したのはパターソン。
でも、演じたヴァル・キルマー一人じゃ退屈。
そこで、架空の人物だが、プロデューサーも兼ねるマイケル・ダグラス演じる動物ハンター、レミントンが登場して、メリハリが付いた。
狂った野獣には、狂ったハンターを。中盤からの登場で、さらに途中退場もしてしまうが、マイケルが楽しそうに演じ、パターソンを漢にし、旨味のある役所。
襲撃時のライオンの唸り声など、音響はリアルで迫力あり。
雄大なアフリカの映像。ジェリー・ゴールドスミスによる音楽もさすが名職人技!
スリルとロマンの、この手のジャンルが好きなら楽しめる、ハンティング・アクション・アドベンチャー!
140人以上を襲ったと言われているが、実際には約35人。
長らく謎だった襲撃の理由も、最新の研究によると、どうやら2頭は歯に疾患があり、従来の草食動物が食べれず、より食べやすい人を襲ったという。
紐解いてしまうと、呆気ない…。
しかし、
多くの人が犠牲となり、恐怖したのは紛れもない事実。
今、2頭はシカゴの博物館に居るという。
2頭を目の前にした時、あなたはかの恐怖に堪えられるだろうか…?