劇場公開日 2023年11月3日

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「夫婦の絆、西欧の起源、映画。」軽蔑(1963) 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0夫婦の絆、西欧の起源、映画。

2023年11月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1963年。ジャン=リュック・ゴダール監督。妻の心変わりを察した男の右往左往の物語と、その要因を補足する(かもしれない)話として、夫の仕事(映画の脚本)と金をめぐる話と、映画を製作するプロデューサーや監督、出演者の話(特にアメリカ資本と映画監督の関係)と、さらにその映画作品自体(オデュッセイア)の物語(ユリシーズとその妻の関係)が複雑に重なりながら進行する。だから、例えばブリジッド・バルドーは心変わりをする妻であり、アメリカ資本の力に揺れるフランス人であり、映画製作につきあう素人であり、ユリシーズの妻である(ついでにブレヒトでもある。みればわかる)。作中の映画監督フリッツ・ラングが原作とプロデューサーの要求の間で微妙な距離とバランスをとって自分らしい映画をつくろうとするように、ゴダール監督も原作小説と微妙な距離とバランスを取っている。それがつまり映画というものだということらしい。
赤、青、黄の原色が意味を持って配置され(特に金の色ともいうべき黄色が特徴的)、イタリアの撮影所を自転車が走り、映画館ではロッセリーニの「イタリア旅行」が上映されている。アメリカ資本、ドイツ人監督、イタリアの撮影所。そこにフランス人の脚本家夫婦が入ってきて、ヨーロッパの起源ともいうべき物語をテーマに、映画撮影という営みが遂行される。ゴダール監督の作品に通底する組み合わせ。しかも、他の監督作品に比べて、引用元は明言されていることが多いし、物語の展開も心理的にわかりやすく、困惑するところがほとんどない。ゴダール監督はこの作品から入るべき。

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