劇場公開日 2023年11月3日

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「シレンシオ!」軽蔑(1963) かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シレンシオ!

2017年10月3日
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ゴダール作品には珍しく大金をつぎ込んだ大作である。そのため製作者側からのかなりの横槍が入ったらしく、冒頭のカミーユ(バルドー)の全裸シーンも製作者側からの要望によって後から付け加えられたらしい。英、仏、伊の三ヶ国語が入り混じった脚本を、製作側で一ヶ国語に勝手に書き換えるという騒動もあったという。

当時ハリウッド側からプログラムピクチャーを撮らされていた名匠F・ラングを起用したところや、アメリカ人の映画プロデューサー・プロコシュ(ジャック・パランス)を俗物として描いたところにも、ゴダールが何を軽蔑していたのかが明確に伝わってくる作品だ。

「なぜ、愛する者の間にも金が入りこむのか」優柔不断の雇われ脚本家ポール(M・ピコリ)が劇中告白するように、大衆が望むものと芸術家の志向するものとの隔たりが、そのままポールとカミーユの心のすれ違いとなって描かれる。繰り返し挿入される主題曲が、ヴィスコンティのごとき演劇的空間に観客を誘い込み、普通の映画とは一味ちがうゴダールらしい演出が光っている。

劇中劇のオデュッセウスとペネロペイアになぞらえた悲劇は、ポールが隠し持っていた拳銃ではなく、カミーユの心中ともいえる事故によって幕を閉じる。「シレンシオ(静かに)」ただ静かに青く広がる地中海に放たれたこの言葉は、かまびすしく映画に横槍を入れたがる製作者たちに向けられていたのかもしれない

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かなり悪いオヤジ