「自然の摂理を踏み躙るな!」グレムリン スモーキー石井さんの映画レビュー(感想・評価)
自然の摂理を踏み躙るな!
クリスマスのとある街を舞台に繰り広げられるスピルバーグが総指揮を務めるSFファンタジー。
主人公の青年ビリーの父親は発明家。
そんな父が自分の発明品を売るために立ち寄ったとあるチャイナタウンの骨董品屋できれいな歌声を奏でる謎の小動物「モグワイ」に興味を示す。
ただ、その「モグワイ」には、(後々明らかになっていくのだが、)水を与えるとその量に応じて増殖したり、さらには夜中の12時過ぎにエサを与えると「グレムリン」という悪魔に化けてしまうという危険な習性がある。
そんな習性を熟知している店主は飼うことは並大抵ではないと売ることを拒否する。
しかし、それを見ていた店主の孫がお金のために店主に無断で主人公の父に譲ってしまう。
その後、父からビリーへとプレゼントされた「モグワイ」は"ギズモ''と名付けられ、ビリーはたいそう可愛がる。
しかし、そんな飼い主とペットとの微笑ましいやり取りが続く状況は一変。不意なミスからギズモに水がかかってしまい繁殖。悪賢い「モグワイ」たちが生まれる。しまいには、その悪いモグワイ一派が己の欲を満たすため夜中にエサを貪り、「グレムリン」へと変貌。そして、ビリーの部屋から逃げ出し、家中街中で大暴れ。最終的にグレムリンは大量増殖し、クリスマスの夜の街はさまざまな人を巻き込み、大混乱となる。
果たしてビリーとギズモはこの難局にどう立ち向かうのか!
この作品の公開当時1980年代初頭のアメリカは双子の赤字に喘いでいた時代だ。
劇中の登場人物たちが調子の悪くなった家電や車に対して時折「これだから外国製は!」と吐き捨てる様からなんとなく、ミクロな目線で当時の世相や情勢を捉えられなくもない。的はずれかもしれないが、なんとも婉曲な表現だ。
したがって、これはただのドタバタSFファンタジーにとどまるものではない。
われわれ人類に対する注意喚起然としたメッセージが込められている。時に皮肉り、時にダイレクトに。
それは人々の日々の生活はもとより、その国の経済や外交、地球全体の環境など多岐に渡るだろう。
そんな日本映画『ゴジラ』を彷彿とさせる本作にはスケールこそ小さいもののハラハラとした事件の中に教訓めいたものを感じてやまない。
それは繊細さに欠けると思われがちなアメリカが作ったものだとしも。
ともあれ、そんなあれこれ考えずとも、ボーっと楽しむのが映画だ。グレムリンというインパクトの強さは頭ではなく、心のどこかに必ず宿る。
そこにSFの面白さがあり、引力を感じるのだ。
もし、愛用している車やらPCやらが壊れたら、
アメリカ人相手に「グレムリンの仕業ですかね?」とジョークをかましたい。そんな後世に伝えたい愛すべき作品だ。