クレイマー、クレイマーのレビュー・感想・評価
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家族の崩壊が呼ぶ感動
妻に出て行かれた男が息子とだけの生活を始めるという一見なんということもなさそうな映画だが、この部分がこの映画の最大の武器である。 初め、子供をろくに育てたことのないテッドは朝ご飯のフレンチ・トーストを作ろうとして失敗。その後も息子ビリーとの不協和音を繰り広げる。だがこれらのシーンが最も重要である。かんしゃく持ちの父親テッドなんかよりも母親の方が好きなビリーは夕食も食べずダブルチョコレートチップアイスを食べてしまう。ここでテッドとビリーは初めて正面切ってけんかをする。だがこの後二人は仲直りをして、二人の絆はいっそう強くなる。これは映画界屈指の名場面であり、最高に感動する。この後、妻が戻ってきて親権を巡り夫婦が対決をする。せっかく仲良くなったのにまた引き離されてしまうとテッドとビリーは互いを惜しむ。これほど胸打つシーンはあるだろうか。 親子という絆の大切さを感じさせる一級品の映画だ。 (11年5月16日)
時代を反映したヒューマンドラマ
時代を反映したヒューマンドラマ。
泣ける要素がもとから揃っているものほど感動映画としての質を問われるがこの作品は見事に自分の予想を上回る力があった。
ホフマンやメリル・ストリープの上手さはアカデミー賞の認める通りだが、それ以上に演出の上手さが光った。
裁判を通して法と言う非情さを目の当たりにするテッドとジョアンナ、ビリーぐらいの子供の複雑な感情、マーガレットという自分達が直面している問題の前例(成功例?)があること、等々
あちらこちらにテッドとジョアンナの考えに影響を与えるであろう演出を配していること。
ビリーと2人での生活最後の日に2人でフレンチトーストを手際よく作っている(2人での生活初日に作ってメチャクチャになっている)ことも外せない。 そして、極めつけは結末を見ている人に任せる演出であろう。
このように随所で演出(脚色)が光った作品で、この時代のアメリカの家庭を反映した傑作。
それにしてもこの時期のメリル・ストリープは輝きが凄すぎる。
見えない家族戦争
父親のしつけ 母親との別れ 色んな問題を背負う小学生 とても単純なストーリーがために最後の終わり方はものすごい衝撃だ。家族の亀裂に気づかない父親のせいで夫婦が別れる。気づかないだけでなく家族が幸せだと幻覚を見ている最悪の父親。それに堪えられず子供を置いて逃げ、後になって子供を奪い返そうとする最悪の母親。そんな二人にとって息子のビリーは天使のような存在。これまで人間が築きあげてきた家族の中で何の問題もなく何の言い争いのない家族等いない。この映画を見ると改めて家族の愛が痛いほどわかる。素直な子供のリアクションがストーリーの軸になっている。がゆえに子供を中心に見てしまう。この映画の主役はむしろ人ではなく家族が主でありそれを上手く脚色したスタッフは優秀。この映画のテーマは"愛の延長線上にある対立"である。家族の愛は素晴らしいと伝えたいがためラストシーンは結果うんぬんより結局家族愛は何にも壊せないという表現であろう。
ヒューマンドラマのベンチマークになりうる
1985年、小学校4年生の時にテレビ地上波で観て、後年、DVDを買うにまで及んだ作品。
この作品は、一人の男として、夫として、あるいは父親として自分はどうあらねばならないか、を考えるヒントに満ちている。そのどれもに、もがきながら取り組んでいる主人公を見るたびにそう思う。
家庭を省みないワーカホリックだった主人公が、息子を育てる過程で自分のキャリアをあきらめ、息子の存在を生きる糧としていく様子に心を打たれる。特に、ケガをした息子を抱き抱えてニューヨークの街を救急病院へ走る姿には、愛する者をなんとしても守る主人公の気持ちが垣間見えて、自然と泣いてしまう。息子の親権を得る裁判に勝つために、転職の面接で見せる主人公の覚悟あふれる毅然とした態度にも。
男として、父親としての格好よさとは何か、人生において肚をくくるとはどういうことか、何かを選び、代わりに何かを捨てた男の強さについて、夫婦のありかたとはいかにあるべきか、当時のアメリカ社会のウーマンリヴについて…など、いろいろなことを考えさせられる作品だ。
名作たる所以は、ホフマン、ストリープのアドリブが連発する凄すぎる演技の賜物。
本日金曜日まで、MOVIXさいたまで1000円でリバイバル上映されています。なお、来週上映は『レインマン』でこれも見逃せません。 79年のアカデミー賞をほぼ独占した名作。離婚と養育権という、現代アメリカが避けて通れない社会問題をハートウォームな人情劇を通して描いた80年の代表する作品です。本作が高い評価を受けているのは時代性を捉えた脚本だけでなく、ホフマン、ストリープのアドリブが連発する凄すぎる演技の賜物です。特に“フレンチ・トースト”と共に、絶対的母性を感じさせるトップ・シーンのストリープの横顔の美しさが印象深かったです。 最近のストリープしか知らなかった小地蔵にとって、彼女の若くて美しい姿が新鮮に映りました。 本作は後半の養育権を巡る裁判沙汰が山場に設定されていますけど、やはり見せ場は、前半の夫テッドが7歳になる子供ビリーの子育てに奔走する奮闘ぶりが見物なんですね。 元々は、広告代理店の腕利きプランナーで、幹部社員として重責を担っていたのが、離婚後、ビリーの子育てに追われるようになってからは、プレゼンに穴を空けて、クライアントに逃げられるという失態ぶり。 子育てだって、そう簡単ではありません。 離婚するまで、ビリーのことを妻のジョアンナに任せきりだったので、父親としてどうビリーと接していいか分からず、ついつい強引に叱ったり、ちぐはぐな関係でした。 会社を首になってまで、ビリーの世話を優先させるテッドに少しずつビリーも心を開いていきます。初めて父子が心を通わせて、抱きしめ合うところは、ホロリとさせられました。 それなのに、一方的にトンズラしていたジョアンナが突然戻ってきて、ビリーの親権を主張。母親なのに、なんで子どもを置いて出て行くのかしら、絶対に考えられないわと思われるでしょうけど、涙を流しっぱなしにするストリープ演技から、ジョアンナはずっと精神が不安定な状態になっていたことを覗いさせてくれます。身勝手ではありますがね。 そんなジョアンナではありましたが、あっさり勝訴してしまいます。裁判所の裁定は往々にして、母親の方を持ちたがるものです。判決で決められた別離の日が来て、テッドがビリーに涙ながらに別れを諭すシーン、これが堪りません。とても切なかったですぅ~(:_;) 人間としてでなく、お地蔵さんの魂として、なんて離婚って罪作りなんだろうと思いました。こんな罪作りなことはあってはいけないですよね。 しかしその後ビリーを引き取りに来たはジョアンナは、テッドとビリーの絆の深さを感じたのか、急に泣き出して、「ビリーの家はここ(父親の家)よ」と言い出すのです。落語の人情噺『芝浜』のオチにも出てくることですが、やはり「子は鎹」なんですね。 これから結婚する人、そして今倦怠期にある方には、ぜひDVDでレンタルしていただきたい作品です。お子さんのためにも、離婚だけは早まって欲しくないですね。 いつ何時あなたさまが、ジョアンナのように「私はいつも誰かの妻であり母親であり娘であった。自分というものがない」と悩み出すか分からないほど、現代は愛に飢えた孤独な世の中になってきていますから(^_^;)
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