クリムゾン・タイドのレビュー・感想・評価
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「学級会を、はじめます」(inオハイオ級潜水艦)
監督はトニー・スコット。
主演ジーン・ハックマンとデンゼル・ワシントン。
【ストーリー】
第一次チェチェン紛争(1994〜1996年)。
超国家主義をかかげたチェチェンの反乱により、ロシア強硬派が核の使用をほのめかし、アメリカをはじめとした世界に緊張がはしる。
嵐の中、あわただしく米海軍が対応、潜水艦アラバマが出航する。
アラバマの艦長、海軍たたきあげのラムジー(ジーン・ハックマン)の部下に、ハーバード大卒のエリート、ハンター(デンゼル・ワシントン)が副長に就任する。
潜航する潜水艦アラバマ。
行動3日目、キッチンで火災が発生、死者が出てしまう。艦員たちに動揺がひろがる。
6日目、司令部より第一警戒体制の指令。
ロシアの核ミサイル危機が、高まったという。
12日目、カムチャツカ沖にて潜水艦とおぼしき艦影を発見。
同時に司令部より、10基の核ミサイル発射コードを受けとる。
最終命令待ちのなか、前方の艦影はロシアのアクア級、ハンターキラー(対潜水艦戦力)と判別された。
眼前に敵、海面に浮上して通信が取れない状況の中、核攻撃を強行しようとするラムジーと、リスクを背負っても情報のアクセスを主張するハンターが衝突し、艦内が二勢力に分かれてしまう。
「世界でもっとも力のある三人、それは合衆国大統領とロシア大統領。そして、合衆国艦隊の弾道ミサイル搭載、原子力潜水艦の艦長である」
——冒頭より。
事前に知っておくべき知識として、かつてソ連には「死の手」という核反撃プログラムがありました。
これは外国、おもに西側からの攻撃には、全地球の敵基地へ無差別に反撃するっていうイカれたもの。
現ロシアもそのシステムを継承していると考えられていて、大国を核攻撃するということは、そういう結果を考えなきゃいけない。
これに関しては、アメリカや中国も近しいシステムを持っているはずで、つまり核兵器は一つでも撃ちこんだら、反撃が反撃を呼んで世界規模で猛烈なる破壊がひろがり、人類に破滅がもたらされるんです。
それが冷戦構造と呼ばれるにらみあいの根幹に横たわっていた、相互確証破壊とよばれた、「メキシカン・スタンドオフ」、つまり致死部位への銃の突きつけあい。
これが冒頭文の意味。
人類こわ。
そういった攻撃と抑制の葛藤を、潜水艦内でやっちゃうっていう人類の心の内面を、役柄わりふって撮った映画とも言えますね。
深夜番組の録画で見たんですが、やっぱデンゼル・ワシントンいいですな。
ジーン・ハックマンも、ゆうづう利かないオジイをやらせたら活きる活きる。
地上波放送だから吹き替えなんですが、二人とも専属の声優さんで安定感じゅうぶん。
ストーリーのメイン部分はこの艦長と副長の対立。
どっちつきゃいいのこの空気って焦げくさいフンイキ。
モロあれですよね、学級会で男女に分かれて紛糾するやつ。
じぶん日和見気質だから風見鶏でいたいのに、男女で対立されると否応なしにどっちか(おもに口げんか負ける方)に割りふられてしんどかった思い出。
艦の搭乗員たちも、ヒソヒソしながらどっちにつくのがいいのか、それぞれ身の振りかた考える。
『蝿の王』のような、閉鎖空間での心理劇からの衝突ストーリー。
実際のオハイオ級にはそんな能力がないので、脚本段階で海軍から協力を蹴られたそう。
しかたなしに外観は映像は自前でヘリ出して撮ったとか。
それでも専門用語は軍隊的、ダメージコントロールなどの撮り方もしっかりしていて、潜水艦ものとしてもつくりは手がたい。
艦内のセットもちゃんと潜水艦っぽいし、爆沈シーンはド迫力。
ツッコミどころもそんなにない、作りのよさが光ります。
日本版Wikipediaでは、脚本にタランティーノが記されてるんですが[要出典]で、英語版には見当たりませんでした。
ううむ…。
潜水艦ものが好きだ。
ひっさしぶりに鑑賞。潜水艦映画大好き人間からしたら外せない作品では...
面白いけど……
前提として
・トニー・スコット監督の他作品は未視聴。
・ヴァシーリイ・アルヒーポフ氏のことは未調査。
面白いけど、何かが足りない。
核ミサイルを搭載した潜水艦。このミサイルの発射はロシアとの核戦争開始を意味する。
その発射命令が出され、発射へのカウントダウンを迎えていた。しかし、そこに新たな、かつ不完全な命令文が届く。
このまま発射するべきか、その命令を待つべきか、艦長と副長の大ゲンカが始まる……!
といったストーリー。
艦長と副長のバチバチな意地のぶつけ合いや、若い船員たちの活躍、対比に次ぐ対比、アメリカ海軍への風刺、特撮シーンなどなど、見どころが沢山ある。
面会や緊迫感も良いし、好きなセリフもいくつかある。
……のだが、あと一歩何かが足りない。
"テーマ"と言える音楽が無いからなのか、描こうとするキャラクターが多すぎるのか、画になるシーンがあまり無いからなのかは、分からない。
二周三周すると新しい発見が出てくるが、あんまりワクワクはしない。
名作と呼ぶには何かが足りなかったと思う。
ちょっと変わった潜水艦サスペンスを観たい人にはオススメ。そんな作品。
潜水艦映画と見せかけてアメリカの縮図を描いた作品
とにかく良くできています。トニースコットの早いカットの切り替えは抑え気味ですが、テンポよく話が進み、飽きる場面がありません。アメコミのシルバーサーファーの作者はどっちが良いかなどの細かいギャグの伏線などもあり、楽しんで見れました。
白人VS黒人というわかりやすい対立はありますが、それよりも、いわゆる民主党VS共和党を描いた作品です。
ジーンハックマン扮する鷹派の白人艦長。帽子はトランプ大統領のように赤い帽子で、かつ、ジーンハックマンが権威を振りかざす場面では必ず民主党イメージの赤いライトが当たります。
対するデンゼルワシントン演ずる副長は、共和党のイメージの青いライト。
対立する場面ではグリーン。
決断を迫られるヴィゴモーテンセン演ずるウェップスは、最後、赤と青のライトに挟まれて苦悩します。
ちょっとあからさまですが、こうやって脚本に上手いこと落とし込んで、一つの作品にするのがハリウッドの良いところですね。最後の馬の話なんてウィットで本当に良いです。
日本だと踊る大捜査線みたいに、無関心な上司、無能な女性上司をコミカルに描いて、セリフで苦悩を叫ばせるみたいな演技しちゃうんですが、そういう安っぽさを嫌うハリウッド作品ならではな出来でした。
好きな作品です。
核ミサイル搭載原潜アラバマの艦長VS副艦長
多分本当に起こってそうな話
ジーンハックマン、うまいね。
潜水艦モノの傑作でありフィルム映画の名作
名優ふたりの対置・対照も面白かった
<映画のことば>
我々は、自由は守るが、実践はしない。
きっと、そういうものなのでしょう。民主主義の世の中での武力(軍隊)の存在意義というものは。
そのように、自身は自由を行わず「上意下達」が至上命題である軍隊(潜水艦)のなかでも、司令官の決断についても、牽制の仕組み(構成員による議論の余地)が用意されているということは、やはり「自由を行わない」という軍隊も、自律的な部分社会としては、民主主義の要素が絶無ではないことを物語るものではないでしょうか。
名優ふたりの葛藤を通して、そんなことを垣間見せる一本だったと思います。評論子は。
題名は、直訳すれば、「深紅の潮流」とのことで、深紅は共産主義を象徴しているのではないかとの解釈もあるようですが、二人の男の「熱い血潮」のような意味に受け取っておきたいと思います。評論子としては。
(追記)
「潜水艦モノにはハズレなし」とは良く言ったもので、本作もご多分に洩れない一本だったと思います。評論子は。
同じく軍人であっても、あくまで冷徹に判断を下すハンター少尉(デンゼル・ワシントン)と、「頭脳ではなくハートで戦う」とでもいうべき熱血漢のラムジー大佐。
その男二人の対立軸も、素晴らしい一本だったと思います。評論子は。
程良い匙加減
危機管理!
攻守が目まぐるし過ぎて、本論が…
小沢さとるの「サブマリン707」「青の6号」
の潜水艦マンガを見て少年時代を過ごし、
子供の頃に初めて観た洋画が潜水艦物だった
人間としてはたまらない舞台設定の作品だ。
シドニー・ルメットの「未知への飛行」や
キューブリックの「博士の異常な愛情…」
にも通じるテーマで、
潜水艦の中だけという限られた空間での
たたき上げの艦長とエリート副艦長の
核のボタンを巡る確執
の展開の緊迫感そのものは見事で、
本来は名作になって不思議のない題材だ。
しかし、何かしっくりこないのは
そのハイテンションが連続し過ぎて、
話の強弱が小さくなったためかも知れない。
艦長拘束
→艦長と支持派の反撃
→副艦長と支持派の拘束
→副艦長と支持派の反撃
→艦長派の再反撃
と、目まぐるしく立場の逆転が
繰り返されるため、
途中から非常時における核攻撃の判断への
二人の人間としての苦悩という本論が薄く
なってしまったイメージだ。
それも、何かと銃を持ち出す主導権争いも
安易な盛り上げ演出と感じる。
話の材料は良く、
海上での実際の原潜の航行や潜水シーンと
海中での特撮シーンも見事だっただけに、
監督の調理の力が少し足りなかったかな
とのイメージだった。
さて、エンディングで核ミサイルの
発射権限が艦長から大統領に変更になった
とのテロップが流れたが、
これはあくまでも米国の話だろうし、
核ミサイル搭載原潜保有の他国のことや
この映画のように核弾頭を積んだ軍事兵器が
国の拘束から外れたりしたことを考えると
何の安心感にも繋がらない。
ところが現実は更に上を行っており、
人間的苦悩が入る隙間もない
人工知能兵器の時代になっては、
この映画も過去の遺物に成りかけている
のかも知れない。
たたき上げVSエリート!!
映画史上最大の内輪揉め
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