グッドフェローズのレビュー・感想・評価
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香り・・・立たない?
うむ、これは何か言うことが難しく感じますね。
なんていいますか、微妙なことではあるのですが、私にはこの作品、どうも香り立ってこないと言いますか、そんな気がしてしまうんです。期待値が高かったためか、余計にその感覚が際立ってしまいましたね。
ギャング映画はとても好きで、スコセッシ世代の作品で言えば、やっぱりコッポラの『ゴッドファーザー』とか、セルジオ・レオーネの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』なんかに惚れているわけですが、それらに感じられたある種の香りというものが、この作品ではちょっと薄かったかなという気がしてしまいました。
もちろん、デ・ニーロの演技なんかは相変わらず素晴らしいと思うのですが、とりあえず彼らギャングの存在自体が放つ妖しい香りが感じられなかったのが、少し寂しかったですかね。
これは時代設定の問題なのかな? それとも露骨に実話に忠実であったがゆえなのかな? 背景情報をあまり知らないので何とも言えないですが、これは私には、映画の魅力って何だろうと改めて考えさせられるような悩ましい映画でしたね。
シドのMy Wayが本当に似合う
輝き、散ってゆく、ギャングの一瞬
地上波では無理な、実話を基にした名作
天職マフィア、一人間の人生
90年代のスコセッシは奇跡的な作品を連発していた
1990年アメリカ映画。145分。マフィア映画としては「ゴッドファーザー」を凌ぐ傑作と名高い、実話をベースにしたマーティン・スコセッシ監督の作品でございます。
内容は、子供のころからギャングスターになることを夢見てきた主人公が、その道をひたすら突き進み、そして結局ギャングスターになれないという30年間の話。
この物語の隠し味の一つは、60、70、80年代という三つの時代の変遷をマフィアの世界を通して描いていること。特に主人公が大人になる70年代と80年代の描き方が秀逸。70年代は現金輸送車の強奪が当時のマフィアのトレンドだったが、80年代になると情報技術の進歩で一変。貨幣は現物で運送されなくなり、マフィアはかわりに麻薬ビジネスに手を染めていくようになる。
60年代、70年代のマフィアの世界で重宝されていた義理と人情といったマフィアの精神性は、そのようにして麻薬に侵されていき、人間性は希薄になり、80年代には仲間をいとも簡単に裏切っていくようになる。
ジョー・ペシ演じるヤクザはその象徴中の象徴。この登場人物は、明快な理由もなくただ気に入らないという理由だけで、かたっぱしから人を殺していく。彼には義理も人情もあったものじゃないのだ。
「むかしのヤクザは人情あつかった」とわたくしの親父がいってたのを思い出しました。これはきっとアメリカだけの話ではなく、世界中で起きていた現象だったのでしょう。
ギャングスターを憧れた主人公(レイ・リオッタ)が結局ギャングスターになれなかったのは、彼に哲学がなかったのが一番の原因だが、ひょっとしたらそれ以上に真の輝きをもった人間が創られにくい時代に偶然生きてしまったという不運が大きいかもしれない。
これはどの世界でも同様だと思う。日本でもおやじ世代のほうが、いまのわたしたちの世代の人間よりも強烈な個性と凄みのある人が多い。この作品は、マフィアという世界を通して、誰の人生にもきっと結びつくであろう普遍的なもの描いた作品です。
そして、劇中の背筋がぞっとするような希薄な人間たちを見ていると、これは現代を予見した作品であったかもしれない、なんてことも思ってしまいます。スコセッシ監督はあのデ・ニーロでさえも、人間性のかけらもなくあっさり描くのだからすごい集中力です。
100年後の世界では、きっとスピルバーグよりもスコセッシが世紀の巨匠として映画の歴史に刻まれているでしょう。
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