「ネオレアリズモの最後の傑作」木靴の樹 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
ネオレアリズモの最後の傑作
通底に共産主義革命への共感を呼び掛けるテーマを内包している
それが単なる日常の毎日のとるに足りない事件や事柄を淡々と描きながら、観るものを飽きさせない力を与えている
共産主義体制には幻滅した現代ではあるが
40年以上昔の夢と理想をまだ共産主義に抱けた時代の熱を感じる
じいちゃんが壁沿いに植えたトマトの土のように、ほのかな熱が残っているのを感じる
貧しい農民の子供が教育によって社会の矛盾を感じとり目に光を宿すラストは、未来の革命を信じた、汚れの無い光だ
しかし現代では、それももはや地に墜ちて泥にまみれているのだ
馬蹄に隠した金貨のように、どこにももうないのだ
それでもなおこの作品には力がある
美しい映像
ミレーの絵の世界そのまま
あるがままの当時の北イタリアの寒村貧農の日常がフィルムに写しとられている
日本で言えば明治期、その時代の日本の田舎の貧農とさして変わらぬ暮らしのリアルティ
バルビゾン派の絵画がフランスの農村のあるがままを描くことだけで、社会の階級間の緊張を煽ると非難された欧州の当時の空気
それまでを観客に感じさせるように巧みな構成をみせる
樹を切るまでに至る小さな罪の積み重ねで良心のハードルが下がっていく様を丁寧にみせる優れた脚本
何より素人の村人の自然な演技
その視線!
怒鳴る事もない
泣き叫ぶこともない
最小限の台詞、飾る言葉もない
なのに目が離せない3時間
監督の卓越した手腕を感じました
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