狩人の夜のレビュー・感想・評価
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とても面白かった
子どもだから追い込まれると簡単に白状しちゃうところが切なかった。それでも最後の最後は口を割らないところがえらい。
ロバート・ミッチャムがうちに来て、お母さんまで殺されるなんてつら過ぎる。しかもお母さんは体を求めて拒否されてしまう。ロバート・ミッチャムはインポだったのだろうか。歌が怖かった。納屋で休んでいるときに現れてシルエットで歌っていた。お兄ちゃんが「あいつは夜寝ないのか」と言っていたのが面白かった。妹が再会した時に駆け寄って抱きつくところが、あちゃーと思うのだけど実に子どもらしい。
子どもも母親も、お父さんが犯罪者なのに街ではそれほど差別されていなくてよかった。
グループホームを運営しているおばさんが素晴らしくかっこよかった。里親映画だった。ロバート・ミッチャムを銃で撃った後、叫び声がふざけているようだったのだが、弾が当たった悲鳴だった。
宗教色が強くて、詳しい人はいろいろともっと楽しいのかもしれない。
(追記)
DVDを買って2回目。クライマックスで、グループホームのおばさんと、ミッチャムが同じ歌を違う歌詞で合わせて歌っているのが面白い。おばさんはミッチャムのことをすぐに偽者と見抜いていただから歌詞が正しいのはおばさんなのかな。
演出が古くて全く迫力がない
総合:30点 ( ストーリー:30点|キャスト:40点|演出:30点|ビジュアル:55点|音楽:60点 )
男はいとも簡単に家庭に入り込んで、未亡人と再婚出来る。殺しがどのように行われたかも描写されない。これでは犯人の怖さも背景も殺人鬼としての能力も伝わらない。喜劇でもないのに、これだけ緩い連続殺人犯もなかなかお目にかかれない。1950年代という時代のせいだろうが、どのようにそうしたかをはっきりと描写しない演出は全く迫力がなく、物語を相当につまらなくしている。むしろもっと古い40年代か30年代くらいの作品にすら思える。悪に直面した非力な幼い兄妹の逃避行が童話のようでちょっと幻想的だが、全体としてただただ古い演出に魅力がない。
急に少年が男を許すような態度をとるのもわけがわからない。物語の都合上、金の在りかをばらすためだけのために挿入された場面のように思えて仕方ない。そして過去の男の25件の殺しが結末では説明もなくいきなり裁判になっているのにも手抜きだし、それに突然出てくる孤児の愛情の話も話の本筋から外れているように思える。
スティーヴン・キングが愛した一本
キングだけではなく、多くの作家や映画監督がこの作品に魅せられたのではないか。
「ケープ・フィアー」「処刑人」など部分的に本作を真似ている映画もたくさんある。個人的にはゼメキス「ホワット・ライズ・ビニース」を観た時も映像的に似てるシーンがあるなあと思った。
私の好きなシャブロル監督の遺作にも「狩人の夜」に関するセリフが出てくる。公開から50年以上経って尚、愛され続ける作品なんだろうと思う。
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ダークサスペンスの傑作と謳われているけれど
ストーリーはお伽噺的、映像は幻想的、結末も牧歌的。
リアリズム溢れるサスペンスとは対極にあると思う。
それでも、底冷えするようなダークさがこの作品にはある。
主人公(恐らくチャールズ・ロートン監督の投影)が、徹底した子供嫌い・女性嫌い・人間嫌いだからだろうか。
そこには理由もなければ言い訳もなく、ただ憎んでいるという怖さ。
人間への純粋な憎しみを、こんなにも可笑しく美しく描いた作品が他にあるだろうか。
言い換えれば、憎むことでしか他人と交われない男の悲しさを掬い上げている。
人間を憎んでいる代わりに、動物(ふくろうや亀)を愛おしそうに撮っているのも何だか悲しいんだか可笑しいんだかわからないけれど、心に染みる。
憎しみを肯定も否定もしないアンモラルな映画だが、最後に愛が勝つという牧歌的な結末が用意されていて、アンモラルを直視できない私のような凡人はそのラストに少しほっとする。
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前述のシャブロル監督も寓意的なストーリーの奥底に頑な冷たさを忍ばせる名手だった。やはり「狩人の夜」が好きだったんだろうと思う。
とっても恐ろしいおとぎ話
名優チャールズ・ロートンの唯一の監督作品として、映画ファンの中ではカルト的人気を得ている幻の映画。本作をカルトたらしめているのは、内容がホラーばりのサイコ・サスペンスにもかかわらず、作品全体が御伽噺のようなファンタジー然としたところ。紙芝居のような画像と、全体にゆったりとしたロマンティックな味わいが何とも良い。この作品をカルト的にしているもう1つの要因として、主演のミッチャムの怪演がある。とにかく怖い・・・。牧師になりすまし(もしかした本当の牧師かも、そうだとしたらなおさら怖い)、神の制裁を名目に、堕落した女を殺す猟奇殺人者。ミッチャムの一見紳士然とした穏やかな顔つきの中にある無表情が本当に不気味だ。その表情のまま、幼い子供を襲うシーンは、並みのホラー映画より背筋が寒くなる。
軽犯罪で服役中(殺人容疑で捕まっていないところが、またまたコワイ)、同室(?)となった強盗殺人の死刑囚から、盗んだ金がまだ家族の元にあることを知った牧師は、死刑囚の妻(被害者をやらせれば天下一品のシャーリー・ウィンタース、いつもながらの名演。)に近づく。彼の穏やかな物腰に大人たちはコロリと騙されるが、幼い息子は彼の正体をいち早く見抜く。少年の妹はあまりに幼すぎて、大人たち同様牧師になついてしまうので、少年は孤軍奮闘することになるのだ。ここで浮き彫りになる大人たちの愚かさ。まんまと死刑囚の妻と再婚した彼は、新婚の妻に、夫の愛を求めることは罪悪であると信じさせてしまう。妻は毎夜神に祈り、しだいに熱狂的な信者として平成を見失っていく。悪いのは全て自分だと信じる彼女は、夫が金目当てであり、自分や子供たちの命をも狙っていることを知りつつ、穏やかな気持ちで彼の刃を受けてしまうのだ。車ごと河に沈められた彼女の死体は、蒼き水の中に漂う水草とともに髪を揺らし、静かに静かに眠っている。この衝撃の映像のあまりの美しさにしばし見とれてしまう。この死体の第一発見者である老漁師が、ここでとてつもない間違いを犯してしまう。自分が犯人にされると思い込み、警察に知らせず、自宅で酒びたりになり震えているのだ。彼がいち早く通報していたら、子供たちが危険にされされることはなかったはずだ。冷静に考えると老人が疑われるはずがないのだが、教養も自信もない老いたひとり身を考えると、その愚かな行為も判らなくもないのだが、いくら愚かでも大人としての分別を持ってもらいたいものだと、見ている私としては非常にヤキモキしてしまった。
母が殺されたことを直感した兄は妹をつれて逃亡の旅に出る(周囲の大人は誰一人あてにならない)。ボートで河を下る幼い兄妹の画は、たゆたう河、満天の星によって限りなく平静で美しい・・・。大きな月の出る地平線に現れる、馬に乗った人の影・・・。絵本の世界を写し取ったようなロマンティックなこの画が、実は子供を狙う殺人鬼の影であることを忘れてはならない・・・。
さて、前半愚かな大人ばかりが登場したが、ここでようやく兄妹を救う、賢い大人が登場してホッとさせられる。大女優ギッシュの登場だ。厳しい口調とは裏腹に身寄りのない子供たちをひきとっている彼女は、兄妹を何も聞かず自宅へ連れ帰る。兄の賢さを見て取った彼女は、周囲の大人たちの意見よりも彼の意見を重視してくれる。追ってきた牧師を、一番年長の少女が、彼の見た目に騙され恋心を抱く中、少年の行動から悪人であることを見抜く。勇敢にもライフルを手に彼と対決するのである。人間の善悪を見抜き、罪を嫌うが、小さな罪(ことに経験不足から来る愚かな罪)を許す寛大な心を持っている彼女も、親不孝な息子からの連絡を持つ寂しい大人の一人。それでも彼女には、血のつながりこそはないが、かわいい子供たちが沢山いる。子供たちは彼女の元、元気にスクスク育つことであろう、クリスマスに母親がわりの彼女に子供らしいプレゼントをするほほえましいラストシーンが、彼女らの暖かい幸せを描いている。メデタシ、メデタシ・・・。
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