「人間の独立を人種を超えて普遍化してみせた傑作」カラーパープル(1985) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
人間の独立を人種を超えて普遍化してみせた傑作
紫色の花が咲き乱れる草原から映画は始まる
二人の少女がじゃれあって遊んでいる
しばらくして、黒人の少女だとようやくわかる
この冒頭のシーンに本作のテーマが提示されている
人種は関係が無い
たまたま黒人なだけだ
人間の独立に焦点を当てた映画なのだ
戦前の南部の黒人社会の実相を描いた黒人が原作者のベストセラーを単に映画化したものではない
白人による黒人の抑圧差別社会
その下層にある黒人社会
しかしその黒人社会の中にも階層はあり、さらには女性はもっと強いたげられている
暴力に怯え、笑うことも出来なくなった隷属させられている一人の人間が、差別をものともしない強い人間に出会い、そして自由な人間に出会い、遂には人間としての独立を取り戻す
奴隷解放とは黒人の白人からの解放だけでは無い
人種、民族、性別、階級、地域……
人間による人間への差別、隷属強制は普遍的にある
過去のものだけでなく、今も現在進行形で在り、未来にも続いていく
決してなくなりはしない
それが人間の本性なのだから
だからこそ、戦わなければならない
それが本作のテーマだ
それにつけてもウーピーゴールドバーグは最高だ!アカデミー賞ノミネートは当然、受賞しなかったのがおかしい
彼女の顔を見ているだけで幸せ
世界一の可愛いブスだ!見ていてあきない
もっと見ていたいと思うほど
クインシージョーンズの手になる劇中歌も素晴らしい
セリーのブルースは口パクで実際の歌唱は、その筋では知る人ぞ知るソウル歌手タタ・ベガ
セットもジュークジョイントがでてきて感激
黒人音楽をルーツにもつ現代のポピュラー音楽の全てはこういう店から生まれたのだ
娯楽作品専門の監督だったスピルバーグが、シリアスなドラマの大作を初めて監督してみせた
クインシージョーンズが原作者に推薦したという
白人それもユダヤ人が黒人の物語を撮るなんてという批判はあたらない
この黒人女性の物語を人類普遍の問題に昇華し、まとめきれる力量を彼が持つことを見抜いたクインシーの慧眼や恐るべし
さすが当代一の偉大な音楽プロデューサーだ
スピルバーグは本作の成功を足掛かりに、シンドラーのリストの監督に至る路線を得たという事でも重要な作品