ガス燈のレビュー・感想・評価
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ゆっくりじわじわと迫る緻密な計画
総合:65点
ストーリー:60
キャスト:70
演出:65
ビジュアル:60
音楽:65
見ているうちにすぐ、普通の人を洗脳していくために立てられた緻密な計画なんだというのがわかってくる。家庭内暴力があっても妻が夫から離れないのは一種の洗脳状態にある場合も多いというが、これもまたそれに近いのかもしれない。ただしかなり意図的に計画的にそれが行われている。夫の緻密さと人の心理を操る知識と技術は相当なもの。それにしても10年前の犯罪から始まって、さらに姪を探し当てて惚れさせ、結婚し、引っ越しさせ、洗脳していく。何ともしつこいというか執念深いというか。バーグマンよりもこの夫のほうの印象が強かった。
しかし物語自体は単純で、最初のほうですぐに誰が犯人で誰が被害者で誰が正義の味方かがわかってしまう。何が背景にあるのかは完全にはわからないのだが、おそらく高貴な人の宝石に関連があるのだろうというのも容易に想像できる。おそらくそれは謎解きよりも夫の行動に焦点を置いた製作者の意図であるのかもしれないが、だから話の展開はすぐに読めてしまって、犯罪物というには底が浅い。
恋愛にこそ、本物の悲劇があるんだよ
映画「ガス燈」(ジョージ・キューカー監督)から。
1944年製作なのに飽きることなく、観終えた。
もちろん、最近の映画に比べれば、
トリックとも呼べないような謎解きであるが、
主演のイングリット・バーグマンを眺めるだけでも
満足してしまうほどの安定感がある映画と言える。
映画冒頭、こんな会話が交わされる。
「私の声は歌手に向かないと思うんです」
「恋してるんじゃないかね?」「えぇ」
「恋でこんなに変わるとは思いませんでした。
今は幸せすぎて、悲劇など理解できません」
「恋愛にこそ、本物の悲劇があるんだよ」
何気ない音楽の先生と彼女の会話だが、
物語が進むに連れて、意味を持つようになっていく。
結婚詐欺に引っ掛かる女性には、耳が痛い台詞かもしれない。
男が彼女に近づいてきた理由は、ある目的のためだったから。
「この家を自由に使うためかもしれません。
堂々と探し物ができるようにね」の台詞で説明がつく。
騙された女性は悲しみに涙するが、
「朝になれば、夜だったのが嘘のような気がしますよ」と
慰められるシーンは、現代と変わらない。
出演者が少ない分、ゆっくり鑑賞できる作品とも言えそうだ。
P.S.
好奇心旺盛のおばさんが時折つぶやく「おやまぁ」の会話が、
物語にどう関係しているのか、気になっている。
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