劇場公開日 1996年4月20日

「華やかなカジノの裏側と男女の愛憎劇」カジノ 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0華やかなカジノの裏側と男女の愛憎劇

2024年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

有力者への賄賂、イカサマを行う客への暴力的な対処、ギャングとの付き合いといった、華やかなカジノ運営の裏側にある世界や、男女の愛憎劇が面白い映画。欲にまみれた人間達の姿とその末路を描いた今作は、『グッドフェローズ』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のマーティン・スコセッシ監督らしい作品だと感じた。これら2作品の主人公と比較して、今作の主人公のエースは、真面目で節度ある人柄なため、そこまで悲惨な末路は迎えていなかったところが異なっている。

中盤以降は、エースとその妻ジンジャーとの愛憎劇が面白い。ジンジャーは、付き合っていた男にエースの金を渡したり、彼の金を持ち出して逃亡しようとしたのを咎められて逆ギレする。エースの信頼を裏切った自身に非があるにもかかわらず、彼を責めるジンジャー。この彼女の姿から、状況を冷静に認識できず、他責性が強く感情を抑制できない馬鹿な女を上手く描き出せている。エースも彼女の表面的な美しさに囚われてしまったのが失敗だった。

エースを演じたロバート・デ・ニーロは適役だった。他の登場人物には無い貫禄があり、この役にぴったりで、彼の俳優としての実力の高さを感じた。

根岸 圭一