「映画には明日がある」俺たちに明日はない もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
映画には明日がある
①2020.05.23. 何回も観ているが大スクリーンで観たのは今回初めて。やはり傑作だ。②主演の二人が実際のボニーとクライドの年齢(二人は当時20代前半)には見えなくて、若さゆえの無分別さが上手く伝わって来ないのがやや残念なのは初見の時から印象が変わらないが、(自分が歳をとった分)当時の経済恐慌時代の閉塞感はより感じ取れた。(ポストコロナの時代がこうならないと良いけど。)③しかし演出のトーンはあくまでもドライでライト。今の映画では珍しく無くなった暴力シーンも、女の欲求不満描写も当時としては斬新だったでしょうな(初公開時、私、7歳)。でもラストシーンは今でもやはり衝撃的。④だからニューシネマの走りと見なされたのですが、現代の感覚からすると違和感があるのが1ヶ所。クライドは実際はゲイかインポだったけど(どっちだったかな?)、映画では最後に二人が(体で)結ばれたことで救いを感じさせる演出にしているけれど、今であればゲイで何故悪い?インポで何故悪い?というところでしょうな。⑥ただ逆に言うと、当時は直接的に描写出来ない時代だったからこそ、暗喩として、ボニーが初めてクライドの銃を見たとき、まるでぺニスを撫でるように銃身を撫でたり、赤い口紅を縫った口でコーラの瓶の口を加えたり(この後クライドに拒絶された彼女が代わりの欲望を満たすようにハンバーガーにかぶりつくシーンがある)、クライドにフェラしようとして又拒まれたり、行き場のない欲望を犯罪で発散させていたようにも思える(女の性欲は良く知らないのでわかりませんが…一応)。クライドにしても、ゲイであれインポであれ、マッチョが幅をきかすUSA (特に中西部では)では当時は不具と同じことで、そのコンプレックスを男らしい(?)銀行強盗をすることでバランスを取っていたのかもしれない(かと言って彼らの犯した罪が正当化されるわけではありませんが)。⑥今で言うKY女、ウザくて痛いブランチを演じるエステル・パーソンズが相変わらず上手い。⑦今回はじめて気付いたが、ウォーレン・ビーティを横に乗せて運転していたフェイは、7年後に『チャイナタウン』でジャック・ニコルソンを横に乗せて運転することになる。その運転する横顔を見て感慨もひとしお。そういえば、両作とも最後は車の中で撃たれて死ぬところも同じです。⑧もっと書きたいことはあるけど今回はこの辺りで。