「刹那的な生き様を駆け抜けたカップル」俺たちに明日はない しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
刹那的な生き様を駆け抜けたカップル
Blu-rayで鑑賞(吹替)。
実在の銀行強盗カップル、ボニー&クライドの刹那的な生き様を描き、アメリカン・ニューシネマの先駆となった傑作。
ふたりの出会いから始まり、強盗や殺人など数々の犯罪に手を染めながらアメリカの各地を転々とし、まるで疾風のように駆け抜けた半生が胸に迫って来ました。
自由への渇望。現状からの脱出。閉塞感漂う時代に風穴を開けようと、内側から湧き上がって来る衝動に従って、明日のことなどお構い無しに暴れ回ったふたり。
その先に、破滅の待っていることが薄々分かっていたとしても、一直線に突っ走って行かざるを得なかったことは、ある意味彼らにとって悲劇だったかもしれません。
アウトローながらヒーローだったんだなぁ、と…
世間への不満を募らせながらも想いを燻らせていた人々にとって、銀行が貯め込んだ金を奪い去り、警察の追跡を交わしながらいくつも犯行を重ねる彼らの姿に、体制に対する民意の代弁者のような感情を抱いていたのかも。そこが新聞でクローズアップされ、英雄になったのかもなと思いました。
その証左なのか、逃げる先々で民衆がとても好意的でした。水を分けてくれるし、怪我を負えば手当をしてくれました。相手は強盗殺人犯であるにも関わらず、怖がりもしないで接していました。ある種奇妙でしたが、当時の時代背景だからこそ成立し得た光景なのかもしれないなと感じました。
そんなふたりが壮絶な最期を遂げるラストが衝撃的でした。
不穏な雰囲気からの、静寂を打ち破る激しい銃声。無数のマシンガンの弾丸で蜂の巣に。完全に辱めを受けたレンジャーの私怨の果て。突然の生々しくて目の覚めるようなバイオレンスに、頭を強く殴られた感じでした。全身に銃弾を浴びたその瞬間、ふたりの胸に去来した想いや如何に…
いくら彼らがヒーローでも、鮮烈な物語の主人公であったとしても、我々と同じ人間であることに変わりはありませんでした。喜び、悩み、傷つき、当然、死を迎える存在。本音を言えば、悪いことなんかせずに平穏に暮らしたかったはず。金を貯めたら足を洗うつもりだと云う会話もしていました。
しかし、世間がそれを許さなかった。社会とはいくら抗おうとも逃れられないしがらみのようなものなのかもしれません。心がモヤモヤとして、なんとも虚しさとやるせなさの漂うエンディングに今でも脳髄を揺さぶられております。
※修正(2023/08/24)
ご丁寧に詳しく考査したレビューに頭が下がります。真面目ですね。
私は、兄夫婦も一緒だった事に驚きました。兄弟揃って⁉️
弟を諌めない兄にびっくり‼️
一緒にやっていたんだ。